【観光立国・その夢と現実 42】旅館業界のパブリック精神 小原健史


 今回の表題は「旅館業界のパブリック精神」としたが、この言葉の意味は、あえて全旅連の範囲に区切って言えば、全旅連本部や青年部、JKKの活動は〔全国各地で旅館やホテル業を営む会員の皆さんのために役に立っているか?〕ということである。

 パブリック(PUBLIC)の言葉の意味は言うまでもなく〔公共、みんなの〕ということであり、そして、その反対語はプライベート〔私的な、個人的な〕となるが、あえて英語で表現することでその意味を明確にしたい。

 私がかつて全旅連青年部長や全旅連会長として活動する中で、最も気にかけていた言葉は、このパブリック精神で、組織のトップは常にパブリックな思考と活動が求められていると私は思っている。

 パブリックとプライベートについて思索の道の歩みを進めれば、われわれ旅館ホテルの経営者は、自分自身の旅館の経営を改善し活性化すること、これはプライベートのことだ。人間という生き物は自分がより良くなることが最大の価値で、自分さえ良ければ良いという生物学的な原点が確かにある。しかし、社会が進歩し自分の身の回りや、その環境も複雑化していけば自分独力では解決できないさまざまな問題が発生する。そうなると生物学的な独善の価値観は限界を迎え、次第に同族のみんな、地域のみんな、同業のみんなと共に社会的な価値判断の中において、つまりパブリック精神で問題の解決を図ることとなる。

 この一連の過程は、すなわち〔個から集団へ〕〔集団の力で個の繁栄を!〕は、まさに全旅連の姿であり、存在意義でもある。また、同業の仲間の中でさまざまな活動を続けていくと、毎回一斉に行動を起こすよりも、集団を代表する者いわゆるリーダーがみんなを代表し導くことが、より効果的であることも学習することとなる。理想的にはみんなから選ばれたリーダーがみんなのために行動することだが、人間の永い歴史の中ではリーダーが常にみんなのこと考えて行動すれば良いのだが往々にして独善に走り、私利私欲のためにみんなを抑圧するという歴史的な事実も多い。

 このように記載していくと人間の単独行動と、多数の人間の集団が織りなすことの原点が明確になり、現代の民主主義の価値観の下でわが国の旅館業界の最大組織の全旅連がどうあるべきかは自明の理となる。

 それは、全旅連のトップの会長の言動は全旅連という大きな器のど真ん中に常に存在しているか?会長が発した言葉は、みんな共感を得られているか?器の外に飛び出していないか?と問われる。完璧ではなかった私は常にそれを意識していたように思う。

 旅館業界のトップは、会員が経営の現場で体験する課題、共有する問題点を素早く捉え組織の中で議論し意見をまとめ、早急な対策を打ち出し解決する。紛糾する場合はトップの決断力で方向を示し自分の業界の中での命を懸けてことに当たることが重要だ。いったん決めたことは誰が何と言っても微動だにしない精神力も必要だ。トップの判断がふらふらと浮遊し定まらないと組織は座礁し沈没する。

 例えば、ある問題でトップの選択肢が三つあって“A案”でいくか?“B案”で行くか?“C案”で行くか?悩みに悩む場面で、いつまでも悩み続けてはいけない。およそこれだ!という案を=例えば“B案”が正解だと決断して、その“B案”が正解になるように必死の努力をする。〔大いなる決断と後追いの努力〕こそ先見性の本質だ!

今回は、旅館業界のパブリック精神について述べたが難解であった。反省したい。  (元全旅連会長)

 

 
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