【観光立国・その夢と現実 49】旅館創業者の精神性6 小原健史


 父小原嘉登次は、材木業や建築請負を本来の仕事としながら、和多屋旅館の経営を始めてみるとお客さまの評価を直接に受けることやその評価をもとに改善を行うことで業績が好転することに面白みを感じ次々と手を打っていった。しかしすぐに壁にぶつかる、それはわずか10室の小規模旅館では嘉登次の事業欲は収まることを知らず、より大きな旅館の建設を目標にするに時間はかからなかった。

 最初は温泉街の中に新天地を探したが、長崎街道筋で江戸時代の鍋島藩の藩営浴場を基点とする狭い範囲の中にはあろうはずもなく最終的には街はずれの荒れ地を選ぶしかなかった。新興の小原の成功を妬む他人はささやく「あんな荒れ地に小原は何をしようとしているのか?」「旅館を造るらしい」「あんな所でうまくいくものか」とかまびすしい。

 嘉登次の事業のやり方は、さまざまな選択肢の中から【これだ!】と決断し、それが後で回りの人々に正解であると認識されるように努力をすることにあり、嘉登次は事業には最初から成功か失敗かが分かる先見性というものはないと意識していて【大いなる決断をし、その瞬間からその決断が正解となるような後追いの努力をする!】ことを信条としていた。

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