訪日外国人観光客が好調だ。JNTOによると、5月の訪日客数は前年同月比16.6%増の267万5千人で、5月として過去最高を記録した。
1~5月までの客数は前年同期比15.6%増の1319万4400人となり、菅儀偉官房長官は「(このペースでいけば)今年は3300万人に達しそうで、2020年4千万人は射程に入ってきた」と自信を示す。
このまま何もなければ達成は可能だろうが、訪日客は水物だ。政治や社会情勢に大きく左右される。いったん事が起きると勢いが失せるから怖い。
18日、大阪府北部を震源とした最大震度6弱の地震により、府内で5人が死亡、約400人の負傷者が出た。交通機関は混乱し、水道管の損傷による断水やガスの供給停止で市民生活や企業活動にも影響を与えた。
大阪をはじめとする近畿圏は外国人観光客の人気が高く、18日も多くの外国人が観光を楽しんでいた。そこに今回の地震だ。対応に戸惑う外国人の観光客の姿が多くみられた。
災害情報がうまく伝わらず、「何が起きているのか理解できなかった」「どう行動すればいいのか分からなかった」いう声も少なくなく、日本の外国人対応に多くの課題を突きつけた。
言葉が満足に通じない異国で天変地異にあった時の不安、不便さはいかばかりか。自分が外国で同じような目にあったら途方に暮れてしまうに違いない。日本語で正確な情報が得られれば、行動もしやすくなる。今回地震にあった外国人も同じようなことを考えるのでないか。
大阪観光局は、通常は利用制限のあるWi―Fiを府内5千カ所で無制限で開放した。外国人観光客がインターネットを通じて最新情報を得られるようにとの配慮からだ。ホームページでは地震についての情報を多言語で紹介した。
府も財団法人と協力して「災害時多言語支援センター」を立ち上げ、18日夕方から英語による24時間の電話相談窓口を開いたという。
こうした対応は評価されるが、どれだけの外国人観光客に認知され、利用されたかはまた別の問題だ。自治体の外国人向けの防災対策は居住者を対象にしたものが多いとされ、観光客へのケアは十分でないとの指摘もある。
東日本大震災や熊本地震など過去いくつもの災害でも似たようなことは起きた。その時の教訓は果たして生かされているのだろうか。
大阪北部地震が今後の訪日旅行市場にどんな影響をもたらすのか分からない。口コミで日本の災害情報体制の不備が広まらないことを願うばかりだ。
茨木市内の寺では一部が倒壊し、ブルーシートがかけられている。強い揺れだったことが分かる