草津白根山の本白根山噴火(1月)、福井豪雪(2月)、島根県西部地震(4月)、大阪北部地震(6月)、西日本豪雨(7月)、そして猛暑、台風…と、今年の日本列島は自然の猛威にさらされている。
観光業界への影響も大きく、客足の落ち込みに頭を痛める観光地も少なくない。風評被害も相変わらず出ている。
被害を受けた地域の復旧・復興は待ったなしだが、観光してもらうことで復旧・復興のスピードを上げようという考えがより強くなっている印象を受ける。
本白根山の噴火の影響が長引く草津温泉(群馬県草津町)。客足の減少は県の経済にとっても痛手とばかり、百貨店の高崎高島屋(高崎市)や群馬銀行(前橋市)が応援企画を打ち出した。
高崎高島屋は、3千円以上の買い物をした客に抽選で旅館宿泊券などを贈るキャンペーンを実施。キャンペーンを通して入店客を草津温泉に誘導する試みで、高崎高島屋にとっても自治体とのコラボ企画は初めて。
群馬銀の応援企画はコミュニケーションアプリのLINEを活用した「宿泊券・割引特典プレゼント」で、時代を感じさせる内容だ。
観光と直接関係のない企業が観光復興のために尽力することに対し、「スタンドプレーではないか」「企業のイメージアップに利用しているのでは」と勘繰るのは簡単だが、ここは素直に感謝したい。
話はそれるが、芸能人が被災地でボランティアすることが時折話題になる。売名、偽善という辛辣な意見もあるが、俳優の杉良太郎さんが語った言葉がとても印象に残っている。
東日本大震災のボランティアに駆け付けた杉さんが、あるインタビューで「偽善とか売名と言われることもあると思うが」と問われると、「偽善で売名ですよ。偽善のために今まで数十億を自腹で使ってきた。私のことをそういう風におっしゃる方々もぜひ自腹で数十億出して名前を売ったらいいですよ」と答えたという。
被災の状況を憂いてばかりで、何もしない人もいる。それはそれで非難されるべき筋合いではない。いけないのは、何もしないくせに難癖をつけることだ。
話を戻す。企業の観光復興支援の動きは、きっと水面下でいくつも行われているのであろう。
三洋航空サービス(神戸市)は、西日本豪雨の影響で中四国方面の観光客が減少していることを憂慮し、復興応援ツアーを企画。収益金は被災地復興支援金として日本赤十字を通じて全額寄付するという。
支援の仕方はそれぞれだが、観光復興支援の動きがもっと出てきてほしい。
【内井高弘】
観光面で復旧・復興を後押しする動きが出ている(群馬県の草津温泉街)