「日本は現金の使用が多いが、キャッシュレス化が世界の流れになってきたのは間違いない。インバウンドが増えるにつれ、利便性を高めるためにやらないといけない」。こう語るのは政府高官だ。
政府はいま、キャッシュレス決済の普及に力を入れ始めている。日本の決済比率は2割程度にとどまっているが、これを2025年までに4割に引き上げる方針だ。
キャッシュレス決済比率は韓国で約9割、英国で5割強、米国でも4割強といわれる。中国では現金を持ち歩かないのが当たり前ともいわれている。日本はキャッシュレス化の波に乗り遅れており、政府は「世界から取り残されかねない」と危機感を募らせる。
キャッシュレスはQRコード決済だけではない。日本ではQRコード決済はあまり進んでいないが、交通系やコンビニ、スーパーなどでの電子マネー(スイカなど)は普及している。このため、国内向けのキャッシュレス化と訪日客向けの話は切り離して考えるべきだとの指摘もある。
国内で普及している電子マネーの利便性を高め、訪日客に対して国内発行の電子マネーの利用を推奨すればキャッシュレス化に対応できるのではないか、とアナログ記者は思うのだが、認識不足か。
キャッシュレス化の動きは確実に出ている。読売新聞によると、東京都渋谷区は4月から、キャッシュレス決済のための機器約500台を区内の商店会加盟店に無償提供する。決済ができる店を増やし、訪日客の利便性を高める狙いという。ただ、店側は通信環境を整備する必要があり、決済手数料は負担しなければならない問題がある。
宮城県もキャッシュレス化に本腰を入れ、7日には県庁で観光・商工関係団体、市町村の担当者らを集め、説明会と相談会を開いた。JCBやペイペイ、ラインペイなどが事業内容やキャッシュレス化の利点などを説明。10月の消費税率引き上げや訪日客の誘客を見据えたもので、県は「地域経済や観光の活性化を目指す」としている。
佐賀県内では佐賀市と嬉野市が17年度に宿泊施設や飲食店、土産物店に電子決済端末導入費の3分の2を補助する制度を開始している。
キャッシュレス化に対応する旅館も出てきている。日本旅館協会は電子決済委員会を立ち上げ、キャッシュレス決済への対応、会員施設への普及を検討している。
決済事業者に支払う加盟店手数料や決済端末の導入費用を敬遠し、キャッシュレス決済に二の足を踏む事業者は依然として多いが、対応せざるを得ない状況になるのだろうか。
政府がキャッシュレス決済に力を入れている。便利さが強調されるが、なかなか普及が進まない(写真と本文は関係ありません)