【観国之光 241】鉄道会社の連携 観光復興への期待大 本社論説委員 内井高弘


札幌―道東間を走ることになる東急の「ザ・ロイヤルエクスプレス」。観光客増への期待が高まる

 首都圏の鉄道会社の観光列車が北海道を走る―。想像もしなかった異色の取り組みが始まる。胆振東部地震の影響を受けた北海道を応援するための「観光振興と地域活性化を目的とした、観光列車の走行プロジェクト」という。

 JR北海道とJR東日本、JR貨物、そして東京急行電鉄が12日、北海道の観光事業で連携すると発表した。自社の観光列車を他社に貸し出すケースは珍しく、関係者は「鉄道業者4社が協力する例のない取り組み」と胸を張る。

 計画によると、JR東は「びゅうコースター風っこ」を提供し、今年7~9月の土・日・祝日に「風っこ そうや」として宗谷線(旭川―音威子府、音威子府―稚内)で運行する。

 宗谷線は現在観光列車が走っておらず、宗谷エリアの夏の観光の目玉として期待されている。JR北が車両を運行し、商品造成、販売も行う。春には発売されそうだ。

 東急は横浜―伊豆急下田間で走行している豪華観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」を投入、札幌―道東エリアで走らせる。運転日は20年5~8月の間の約1カ月、週4日程度を予定している。東急が旅行商品の造成、販売、車内サービスを行い、JR北が列車の運行に協力する。発売予定時期は今年の冬になる。JR貨物は両社の観光列車を北海道まで回送させる役割を担う。

 厳しい事業環境にあるJR北にとって両社の協力は助け舟になりそうだ。線路を貸し出すことで線路使用料が得られる。また、二つの観光列車を利用して北海道観光を楽しもうというニーズも取り込める。

 東急は北海道内にリゾートやホテルなどを持っており、収益の拡大が見込め、JR東は豪華寝台列車「トランスイート四季島」を道内まで走らせており、「風っこ」投入で旅行商品を増やせるとの指摘もある。

 JR北に観光列車がないわけではない。流氷物語号(網走―知床斜里)やSL冬の湿原号(釧路―標茶)、富良野・美瑛ノロッコ号(旭川―富良野)など北海道ならではの大自然を楽しめる列車が少なくない。

 また、新たに観光列車を投入する計画も。まず、キハ40型の「紫水」号と「山明」号を9月から使用開始。20年秋には261系多目的特急列車の使用を始める。車内でのイベントや食事などに利用できるフリースペースを設置するのが特徴だ。

 各社それぞれに思惑がありそうだが、今回の取り組みが北海道の観光復興につながれば何よりだ。

 こうした例が各地で広がり、災害からの復興に威力を発揮することを願ってやまない。


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