まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」。この削減を目指す「食品ロス削減推進法」が5月24日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。公布後6カ月以内に施行される。
同法は、食品ロスの削減を「国民運動」と位置付け、問題解決に取り組むよう求めている。
政府が基本方針を策定するとともに、自治体に対しても具体的な推進計画を作る努力義務を課している。企業は国や自治体の施策に協力し、消費者も食品の買い方を工夫することなどで自主的に削減に努めるとしている。また、貧困世帯に食品を提供する「フードバンク」の活動支援も盛り込んでいる。
農林水産省によると、2016年度に国内で廃棄された食品は約2759万トンで、このうちまだ食べられるものは約643万トンあった。内訳は事業系が352万トン、家庭系が291万トン。
前年度比3万トンの減少だが、643万トンというこの数字、国連が食糧難に苦しむ国や機関などに支援した2年分に相当する量といわれている。
食品ロスを減らす取り組みも始まっており、例えば「ガスト」などを展開するすかいらーくホールディングスはご飯の量を選べるようにするなど食べ残しが出ない工夫をし、食べきれなくても店側で持ち帰る容器を用意している。
食品ロスは旅館・ホテルにもある。団体客の宴会ではお酒が進むあまり、食事に手をつけない人もいる。宴の後の会場を後にする時、「もったいないな」と感じるのは筆者だけではないだろう。
「中締めの後に食事タイムを設けて、少しでも召し上がっていただけるようにしていますが、それでもだいぶ残ってしまう。結局は廃棄します」とある温泉地の女将は悔しそうに言う。
残飯を飼料にしたりする機械も売ってはいるが、「そこまでの投資はできない」と二の足を踏む。
宴会時の食べ残しを減らすため、乾杯後30分、お開き10分前に「食べきりタイム」を設け、料理を残さずに食べようという「3010運動」というのがある。
旅館・ホテルも採用する動きがあり、JR東日本ホテルズは昨年11月、宴会場を持つ全11ホテル(ホテルメトロポリタン、東京ステーションホテルなど)で運動を展開すると発表した。持続可能な開発目標(SDGs)活動の一環だ。
食品ロスをなくすにはさまざまな分野での対策が必要になる。消費者一人一人の食習慣や消費行動の見直しも欠かせない。3010運動にしても客の協力がないと成り立たない。法制定を機に、「もったいない精神」を思い起こしてほしい。
まだ食べられるおいしい料理が廃棄されるのは何とももったいない(写真と本文は関係ありません)