【観国之光 258】改正健康増進法一部施行 受動喫煙対策一段と 本社論説委員 内井高弘


喫煙者を取り巻く環境は厳しくなる一方だが、「喫煙の自由」を訴える人も多い(東京都内で)

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が7月1日、一部施行された。東京五輪・パラリンピック開催前の来年4月には全面施行され、健康的な生活空間の確保に向けた動きがより本格化する。

 改正法は、受動喫煙の影響が大きい20歳未満や、病気の人、妊婦らが利用する学校、病院、行政機関、児童福祉施設の敷地内を原則として禁煙とするよう規定。悪質な違反者には罰則が科せられる。

 4月26日には改正法の施行に関するQ&Aも公表されており、対応するうえで参考となる(日本観光振興協会のホームページにも掲載)。

 改正法の施行により、屋内は完全禁煙となる。喫煙者以外立ち入らないエリアを設けるなどの受動喫煙防止措置をとれば、例外的に屋外に喫煙所を設置できることもあってか、屋外喫煙所の利用を続ける自治体や国の省庁も少なくないという。敷地内全面禁煙は少数派との指摘もある。

 五輪・パラリンピック開催地、東京都の対応が際立つ。もともと受動喫煙対策には熱心で、改正法より厳しい規制を敷く。6月末には都庁の敷地内に設けられていた喫煙所を全て閉鎖という徹底ぶり。これでたばこが吸える場所がなくなった。

 たばこの煙には多くの有害物質が含まれており、受動喫煙によって心臓病や肺がんなどのリスクが高まる。

 日本医師会は「喫煙者の死亡率は非喫煙者より高く、国内で喫煙に関する病気で亡くなった人は年間で12万~13万人、世界では年間500万人以上と推定されている」という。また、受動喫煙によって年間約1万5千人死亡しているとの推計もある。

 にも関わらず、日本の受動喫煙対策は遅々として進まず、世界最低水準といわれる始末だ。遅まきながらの対策強化といわざるを得ないが、一方で、「喫煙の自由」を訴える声もある。議論を深め、社会の合意点を見いだしていく必要があるだろう。

 来年4月1日からは、飲食店や職場、鉄道、そして旅館・ホテルのロビーなど、多くの人が利用する施設が原則屋内禁煙となる。ただ、喫煙専用室の設置は可能で、小規模飲食店は当面、喫煙を認める。

 旅館・ホテルは館内の全てや一部を禁煙にしたり、喫煙室を設けるなどで対応している。客商売だけに、喫煙者に対して「吸わないで」とはいえない。一方で、「たばこのにおいを何とかして」という声にも配慮しなければならない。

 たばこ包囲網は確実に狭まっているのだが、「いまさらやめられない」という人もいる。なかなか難しい問題だ。


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