10月1日、消費税率が10%になった。2%のアップだが、消費者の心理的負担は決して軽くはなく、景気、そして観光業界にどんな影響が出てくるのか心配だ。
消費税は1989年4月に税率3%で始まった。その後、97年4月に5%に引き上げられ、2014年に8%となった。創設されて今年で30年。初めて2桁の時代に入ることになる。
少子・高齢化が進む日本にあって、税収が景気に左右されない消費税は社会の貴重な財源であり、一定の負担はやむを得ない。問題は税率が「標準」と「軽減」の二つになるために混乱していることだ。
消費税は低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」の課題を抱えている。この問題を解決するために設けられたのが軽減税率だが、飲食料品の場合、食べ方や場所で税率が変わるだけに、戸惑いを覚える人が少なくない。例えば、スーパーで買った弁当や飲料は8%だが、店内のイートインコーナー(食事場所)で食べれば10%かかる。「飲食設備」での食事とみなされ外食となるためだ。
旅館・ホテルの客室に備え付けられた冷蔵庫内の飲料は軽減税率の対象となるかどうか。
国税庁の資料によると、冷蔵庫内の飲料(酒税法に規定する酒類を除く)を販売する場合は、単に飲食料品を販売するものであることから、「飲食料品の譲渡」に該当し、軽減税率の適用対象、つまり8%となる。
温泉地にある旅館の女将は言う。「売店の土産でも菓子類なら8%、民芸品や品物は10%、食事会場で飲むジュースは10%だが、部屋の冷蔵庫のジュースは8%…。すごく振り回されている気がする」と。
この旅館は部屋の冷蔵庫には何も入れておらず、売店のレジは入れ替えた時に2種類の税率に対応した機種を採用したので、「何とかなりそう」という。
消費増税に合わせ、中小事業者の店で主に使える「キャッシュレス・消費者還元事業」も始まる。来年6月末までの期間限定だ。電子マネーやクレジットカードなどで代金を支払うと、ポイントが付与されたり、値引きされたりする。景気刺激に加え、国のキャッシュレス化推進が背景にある。
キャッシュレス化は時代の流れといえるが、宿泊業者からは「手数料が発生するので、結局旅館や商店側が負担を強いられることになる。カード会社がもうかる仕組みのような気がする」との声も聞かれる。
当面は混乱するだろうが、そのうちに慣れてくるのだろう。増税分の価格転嫁もあるだろうが、上げ幅はそう大きくはない。旅行意欲の減退に結び付かないことを願うばかりだ。
2%の消費税率アップは観光業界にどんな影響を及ぼすか(東京都内)