那覇市にある首里城の火災に言葉を失った。中心的建造物の正殿など7棟、計4800平方メートルが燃えるという大規模火災で、収蔵されていた工芸品の多くも被災した。沖縄県民の落胆は察するに余りある。
首里城は沖縄にとって重要な観光スポットの一つであり、首里城周辺の観光施設や飲食店などでは売り上げが減少しているようだ。一方で、地元紙によると、首里城に行けないために他の観光施設に客が押し寄せているという。いずれにしても観光産業への影響は今後いろいろな方面で出てきそうだ。
那覇市消防局は7日の記者会見で、出火原因について、分電盤などの電気設備の可能性が高いとの見方を示したが、特定には至っていないようだ。
調査の長期化も予想されているが、このような火災が今後起こらないようにするために、早く原因特定がなされ、文化財防火に役立ててもらいたい。
歴史的な建造物や文化財はこれまでたびたび焼失し、防火管理の在り方が問われてきた。
4月に起きたパリのノートルダム大聖堂の火災を受けて、文化庁は「国宝・重要文化財の防火対策等について」通知し、所有者に対し防火対策の徹底を求めていたが、10月31日付で、指定された文化財だけでなく、復元された建築物についても、防火設備の点検や確認を求める通知を各自治体に出した。
文化庁が8月に公表した緊急調査によると、世界遺産・国宝の8.3%、重要文化財の35.4%で夜間の緊急時に対応できる人が2人未満であることが判明、管理体制の脆弱(ぜいじゃく)さが指摘された。首里城火災は深夜に起きている。
首里城火災のショックも冷めやらぬ中、4日には岐阜県の白川郷で、世界遺産に登録されている合掌造り集落に近い小屋が燃えた。幸い集落への被害はなかったが、改めて火事の恐ろしさを実感させた。
文化財の被害は地域の歴史や文化にとって大きな損失となるが、前述のように観光面にも影響をもたらす。
18年度に首里城地区を訪れた観光客は280万人に上るという。国内の沖縄人気に加え、インバウンドの増加もあって、観光客は右肩上がりの傾向にあった。沖縄は見どころも多いだけに、急激な減少はないだろう。観光業者からは守礼門など火災を免れた一部エリアの開放を求める声も出ている。
首里城火災を機に、傷心の沖縄を応援しようという人もいるだろう。同時に県や国、そして観光業界の沖縄観光PRを期待したい。何より首里城の惨事から教訓を学び、今後に生かさなければならない。
首里城火災で延焼を免れた守礼門。早く元の姿に戻ることを願う