【観国之光 311】第3波到来? 「GoTo」のせいなのか 本社論説委員 内井高弘


食事処ではビニール手袋も用意するなど、感染防止に宿泊施設は細心の注意を払っている(写真と本文は関係ありません)

 新型コロナウイルスの新規感染者が増えている。特に、北海道や東京都、大阪府など都市部を中心に目立っている。日本医師会の会長は「第3波と考えてもよいのではないか」と述べ、政府のコロナ対策分科会も「急速な感染拡大の可能性がある」と警告し、対策の強化を求めた。

 気になるのは、感染者増加の背景に政府の観光需要喚起策「Go Toトラベルキャンペーン」があるのではないかという見方が出ている点だ。本当にそうだろうか。

 十分なデータを集め、専門家が分析した上での「Go To責任論」ならまだしも、ムードでGo Toが悪者扱いされることは納得できない。

 観光庁によると、11月9日現在、Go Toトラベルによる割引を利用した旅行者で陽性と判断された人は138人にすぎない。

 7月22日から10月31日までの利用人数は少なくとも3976万人泊に上っており、Go Toトラベルによって感染した人はほんのわずかだ。

 加藤勝信官房長官はGo Toトラベルについて「利用者に起因して旅行先のホテルや観光施設の従業員に感染が広がったという報告は受けていない」(11月10日)としている。

 北海道の鈴木直道知事は16日、札幌市内の外出自粛や、札幌市とその他地域の往来の自粛を道民に要請すると発表した。
感染者増加を踏まえた苦渋の決断だが、Go Toトラベルの影響については「静かに食事を楽しみながら温泉に入ることで、感染が相次いで確認されているわけではない」とも述べており、見直しは不要との考えを示している。

 現在の全国的な特徴はクラスター(感染者集団)の多様化とされる。歓楽街に加え、職場、外国人コミュニティなど広がっており、より踏み込んだクラスター対応が求められている。クラスターを見つけ出すため、検査を拡充して迅速に行うことも必要だろう。

 観光庁はGo Toトラベルで感染者を出さないよう、さらなる強化を図る。

 登録された全ての宿泊事業者(約2万4千軒)を対象に感染拡大防止策の実施状況を調べており、感染防止に係る参加条件を満たしていない場合は指導・助言を実施している。この調査結果を踏まえ、必要な対応を検討するという。

 冬本番を控え、インフルエンザとの同時流行による医療崩壊も懸念される。国民一人一人が警戒を緩めることなく、マスク着用や手指の消毒、換気、3密回避などに努めるべきだ。ワクチンの開発も進んでいるようだが、観光事業者も引き続き気を引き締めてほしい。

食事処ではビニール手袋も用意するなど、感染防止に宿泊施設は細心の注意を払っている(写真と本文は関係ありません)

 

 
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