【観国之光 320】緊急事態宣言一部解除 本社論説委員 内井高弘


緊急事態宣言の解除が見送られた東京。コロナを気にせず町を歩けるのはいつになるだろうか(東京・秋葉原)

 桜の開花予報が出始めるなど、春の訪れを感じさせる季節になってきた。日によってはポカポカ陽気となり、気分転換を兼ねて外出してみようかという誘惑にかられる。

 大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡の計6府県で発令中だった新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が2月末に解除された。3月7日までの期限を1週間早めた。宣言の目安とする感染状況が最も深刻な「ステージ4」(爆発的感染拡大)をほぼ全指標で脱したと判断されたためだ。

 宣言解除といっても全てが元通りというわけではない。飲食店への営業時間短縮要請を段階的に緩和するものの、外出自粛要請は継続するなど、リバウンド(感染再拡大)が起こらないよう警戒の手は緩めない。

 例えば、大阪府は1日から21日まで、時短要請を大阪市内に絞り、営業時間を午後9時まで(酒類の提供は午後8時半まで)にするという。「マスク会食」を導入、人数は4人以下とし、食事中はマスクで口と鼻を覆うよう求める。

 先行解除となる観光地では期待と不安の声が交錯する。

 ニュース番組を見ていると、週末、行楽地では家族連れやカップルなどが観光を楽しむ姿が見られた。家族連れのお父さんは「宣言も解除されるそうで、気分的にも明るい。リバウンドは怖いが、感染防止対策をちゃんとしていたら大丈夫」と話していた。

 土産物屋の主人も「ステイホームにも飽き、(密を避けて)ちょっと外に出てみようかという気持ちも理解できる。たくさんのお客さんに来てほしいのが本音」と苦笑いする。

 感染再拡大の不安は依然根強く、当面は感染防止を意識しながら日常生活を続けることになりそうだ。

 東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県は7日に解除される予定だが、ここに来て再延長論も出るなど、予断を許さない状況にある。

 小池百合子都知事は28日、報道陣の取材に「下げ止まりどころか残念ながら増えている。今必要なのはとことん徹底して人流を抑えていくことだ」と述べた(3月1日付日経新聞)。

 「大消費地である4都県が解除されないと、本当の意味で観光復活にはならない」という業界関係者は多い。早期の解除に期待したいが、医療現場の負担は緩和されておらず、Go Toトラベルの再開も見通しづらい。

 3~4月は就職や進学、転勤による広域の移動や、花見、歓送迎会などの集まりで感染リスクが高まりやすい。注意が必要だ。感染防止を怠ることなく、来るべき時を待とう。

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