政府は5日、東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県に発令している緊急事態宣言を21日まで再延長することを決めた。予想されてはいたが、2週間の延長は観光業界にとって大きな痛手だ。再延長で新型コロナウイルス禍が収束するとは限らず、変異株感染の広がりも不気味だ。
観光業界に逆風が吹く中、今月1日、日本観光振興協会が記者会見し、「日本の観光再生宣言」を発表した。
山西健一郎会長はコロナ禍で観光需要が消滅、地域経済を下支えする観光は厳しい状況にあるとの認識をした上で、「観光産業が自らの役割を改めて自覚すると共に、広くその意義を発信し、多くの方々に支援していただくため、宣言を発出する」と強調した。
会見には冨田哲郎(JR東日本会長)、髙橋広行(JTB会長)、後藤高志(西武ホールディングス社長)の3副会長と日観振の久保田穣理事長、加えて、日本旅館協会の浜野浩二会長がリモート参加した。
各氏は業界の置かれている状況を説明し、どういった取り組みをしようとしているかを訴えた。
浜野氏は感染防止対策の一層の強化に加え、客室内完結型の商品開発や、個人旅行に対応できる施設づくりの必要性を指摘し、具体策として客室内露天風呂の設置や、団体客用の部屋を2部屋から1部屋に改修することなどを挙げた。
髙橋氏は「国内旅行、海外旅行、インバウンドの道が全て閉ざされ、まさに業界存亡の危機にある。当面の課題は国内旅行の再生と国際旅行の再開」とし、Go Toトラベルについては、緊急事態が解除され、感染状況が一定程度落ち着くことを前提に「可能な限り、地域から、県内ベースから再開してほしいとの期待を持っている」と述べた。
業界を代表する人たちが顔をそろえ、メディアを通じて業界の考えを示すことはこれまであまりなかったような気がする。いまどんな状況にあるのか、これから何をどうしようとしているのかを広く世間にアピールすることは極めて重要だ。一般紙やテレビで取り上げられる機会が多いとはいえないが、黙っていては何も伝わらない。
観光産業はすそ野が広い。雇用者数は900万人と全産業の1割を占め、国内消費額は他産業への波及効果を含め55兆円を超える。まさに日本の基幹的産業だ。機会あるごとに存在をアピールしてほしい。
「観光再生宣言」を発表する日観振の役員。業界一丸となって取り組む姿勢が大事だ