旅にトラブルはつきものといわれるが、北海道・知床半島沖の観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の沈没事故は取り返しがつかない悲惨な事故となった。
知床の大自然を海上から眺めようと乗船した人たちの楽しみ、思いは無残にも砕かれ、残された遺族や家族の無念さは察して余りある。
事故から1カ月以上がたつが、乗員・乗客26人のうち、14人の死亡が確認されたが、いまだ12人の行方が分かっていない。捜索と原因究明を確実に進めてほしい。
運航会社「知床遊覧船」のずさんな運航管理体制が次々と明らかになっている。
天候悪化の予想にも関わらず、海が荒れたら戻るという条件付きで出航を強行。桂田精一社長は運航管理者の立場にあったが、事故当日は事務所におらず、航行中の定点連絡も行われなかった。社長は運航管理の経験がほとんどなかったのに、資格要件に該当すると虚偽の届け出をし、運航管理者として登録していた。事務所のアンテナが破損しており、無線は使えなかった…。命を託せる相手とは思えぬいい加減さだ。
一義的な責任は運航会社にあるが、国の監査・検査にも甘さがあったのではないか。運航会社は過去にも事故を起こし、北海道運輸局の特別監査や立ち入り検査を受けているが、あまり問題視されなかった。
国土交通省は有識者会議を設け議論を開始したが、問題点を徹底的に洗い出し、人命最優先の安全管理体制を再構築してほしい。
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