山梨県が実現に意欲を示していた富士山の麓と5合目を結ぶ「富士山登山鉄道構想」について、県は11月18日、鉄道整備を断念すると発表した。地元などの理解が得られなかったことなどが原因とされる。
同構想は長崎幸太郎知事の肝いり事業といわれた。5合目までの県の有料道路「富士スバルライン」を通行する大型観光バスやマイカーによる渋滞、オーバーツーリズムなどを解消するため、約30キロの区間に軌道を敷設し、次世代型路面電車(LRT)を走らせるというものだ。
富士山はもともと世界自然遺産としての登録を目指していたが、開発が進み、ごみやし尿などを原因とする環境悪化が原因で、文化遺産となった経緯がある。登録の際、世界遺産委員会から人が多すぎることを解消するよう指摘されており、対応を誤れば登録取り消しという事態にもなりかねず、知事も危機感を抱えていた。その対策として、LRT構想を打ち出した。
しかし、LRT構想は(1)レールの敷設など大規模工事が必要(2)環境破壊につながる(3)建設費や災害復旧のコスト面が過大―などが指摘され、富士吉田市や山小屋関係者などが「富士登山鉄道に反対する会」を結成、反対署名を県に提出していた。
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