じゃらんリサーチセンターは3月27日、Z世代の価値観と旅行への意識調査分析の結果を発表した。
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)が運営する観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(以下 JRC)では、国内交流拡大において中長期的に次の社会・経済・消費を作り出すZ世代の旅行スタイル現状を明らかにするため、「じゃらん宿泊旅行調査」を基にZ世代*1の価値観と旅行への意識について再分析しましたのでご報告いたします。
■宿泊旅行に対する意識クラスター7タイプ
「じゃらん宿泊旅行調査2023」のデータを用いて、クラスターに分類し、そのクラスターを基にZ世代の旅行への意識を分析した。宿泊旅行を行うときに意識したこと、実施したことの質問26項目について「1:意識しなかった」「2:意識したが実施しなかった」「3:意識して、実施した」の3カテゴリに振り直して因子を抽出しそれらの因子への反応をもとに分類したクラスター7タイプの特徴を下記に示す。
*1 「Z世代」とは、一般的に1990年代後半〜2010年生まれの人を指すが、
本リリースでは調査対象の20代(18歳~29歳)をZ世代として分析しており、18歳未満は含んでいない。
世代別のクラスター分布からみるZ世代の特徴
・地域とのかかわりを求める「地域体験交流タイプ」は若い世代でより高い出現比率
「地域体験交流タイプ」の特徴は、地域を訪れるだけではなく交流・体験といった地域でのかかわりを求める傾向が強く、若年層ほど出現比率が高まり、Z世代男性は29.6%、女性15.8%で世代間ではもっとも高かった。特に男性の出現比率が高いことがわかった。
Z世代女性は「効率・欲張りタイプ」最多
・このタイプは、効率よくできるだけ多くの場所を回り、新しい場所への好奇心が強いタイプ。計画することを好み、なじみがあるなどリピートすることへの反応はマイナスという特徴を持ち、すべての年代で男性より女性の方が多く、Z世代女性で見ると22.6%でもっとも多いタイプであった。
・ひとり旅率が高い男性に対して、友人・恋人との旅行率が高い女性はグループで動きやすいこと・グループ全員が楽しめることに意識が寄ることで「効率・欲張り」になりやすい傾向が強いと考えられる。
●宿泊旅行に対する意識 クラスター構成2023(性年代別)
地方にこそオンリーの価値がある。魅力を発掘し世界に発信する旅をしたい。
26歳・女性 地方バス事業所勤務 ●宿泊旅行の行き先について インスタのリールで行きたい場所の目星をつけます。地方にこそオンリーの価値があるし、その価値を発掘して発信する旅をしたいので、映えることはもちろんのこと観光者があまりいない地域に行きたいですね。 ●地方のバス会社での働きがい 日本の地方の魅力をもっと海外に伝えたい、地方に足を運んでいただきその地域の人たちの暮らしが豊かになるようなお手伝いをしたいという思いで地元のバス会社に就職しました。初のインバウン ド集客担当で手探りですが仕事を任せてもらえるのでやりがいを感じています。 |
■地域とのかかわりへの意識と実施状況
Z世代での出現比率が高い「地域体験交流タイプ」にもっとも強く表れた因子は「地域志向性」であった。この因子と相関係数の高かった6項目についての意識と実施状況データを男女別に「じゃらん宿泊旅行調査2023」のデータを用いて可視化した。(ⅰ地域のためになること、貢献できることを選ぶ、ⅱ将来の移住やライフスタイルの参考になりそうな旅をする、ⅲ地元の人に積極的に話しかけて情報を聞いたり交流する、ⅳ旅行先の風土や生活習慣を体験する、v自ら主体的に参加する・体験する、ⅵ暮らすように旅をする)
コロナ禍で「地域貢献意識」が大きく上昇
コロナ感染拡大をきっかけにもっとも変化した項目は「地域のためになること、貢献できることを選ぶ」(意識した・計/男性2019年:31.1%→2021年:41.2%→2023年:40.6%、女性2019年:15.2%→2021年:24.1%→2023年:23.7%)で、2019年→2021年にかけて男女ともに大きく上昇していることがわかった。コロナ感染拡大によって地域の課題や困難な状況が浮き彫りとなったことで、「地域」というものを意識する機会が増えたことが影響していると考えられる。
地方への移住を考える旅は実施フェーズへ
地方移住はコロナで注目度が一気に高まったキーワードだ。新型コロナの感染拡大でリモートワークが普及したことなどもあり、「将来の移住やライフスタイルの参考になりそうな旅をする」ことへの関心が高まっているようだ(意識・計/男性2019年:30.1%→2021年:37.0%→2023年:38.1%、女性2019年:14.7%→2021年:19.3%→2023年:21.7%)。コロナ禍で増加後、2021年→2023年はほぼ横ばいであり、一時的な盛り上がりのように見えるが、実施したポイントを見てみると、2021年→2023年にかけて増加し始めており、地方移住の参考になりそうな旅は実施フェーズに移行しだした兆しを捉えた(実施・計/男性2019年: 21.2%→2021年: 22.2%→2023年: 28.7%、女性2019年: 10.3%→2021年: 12.8%→2023年: 14.5%)。
●Z世代の地域とのかかわりへの意識と実施(男女別)
《解説》地域の人とかかわれる経験こそが価値
・地域でオーセンティックな経験を得たいZ世代
コロナ禍の影響を受け、地域・地方への関心が世の中全体で高まる中、特にZ世代は地域の魅力や生活環境を体験し地元の人々との交流を求める傾向が見られた。なぜZ世代は「地域とのかかわり」を求めるのか。要因は多岐にわたるが、①オンラインやリモートなど学び方、働き方が柔軟になったことで移住含め地域がより身近な存在となった。②Z世代の三大都市圏居住率は年々高まり約6割で地域を知る機会に乏しいこと。③地域に居を構え地域活性に向き合う若手への注目など、コロナによって「地域」というものを強く意識する機会が増えたこと。主にこれらの要因がZ世代が地域とのかかわりを求める動機付けとなり、地域で活躍することへの憧れ・かっこよさのような志向性が表れていると考えられる。
・“地域とのかかわり方”に世代ギャップ
「教わりたい」親世代、「一緒に体験したい」Z世代
同じように地域に関心が高い人でも世代によってかかわり方が異なるようだ。世代ギャップを感じたシーンをZ世代に聞くと、例えばZ世代は伝統産業・特産品を買って楽しむより製作してみたい。また地域での体験交流も、親世代は「教わりたい」、Z世代は「一緒に体験したい」とより深くかかわりたい意向が垣間見えた。Z世代のこのような地域との深いかかわり方はリピーターを生むとともに、地域課題を身近なものと捉えた活動や消費に拡大していく可能性は高い。地域での経験価値を提供する「おてつたび」など、Z世代の地域への意識を捉えたサービスも誕生しており、次世代の地域産業への新しい価値提供がどのように変化・拡大していくのか注目していきたい。
詳細な内容については「とーりまかし別冊 研究年鑑 2024」
(https://jrc.jalan.net/publications/publications_type/tkn/)にて4/1公開予定。
JRC 研究員
池内 摩耶(いけうち まや)
調査概要
調査名/じゃらん宿泊旅行調査2019,2021,2023
調査目的/全国の宿泊旅行実施者に対して、宿泊旅行の内容を把握するため
調査方法/インターネット(一般パネル)による調査
調査内容/当該年前年度の国内宿泊旅行(出張・帰省・修学旅行などを除く)の有無について
調査対象/全国18~79歳の男女(2019,2021は全国20~79歳の男女)
回収数/2019 : 15,559件、2021 : 15,719件、2023 : 15,572件
※調査対象に含む20代(18歳~29歳)をZ世代として分析した。
※分析対象年は、過去5年、かつコロナ感染拡大の影響を分析するため、2019(コロナ前)、2021(コロナ禍)、2023(コロナ明け)を分析対象年とした。