【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 427】不正・不祥事を防ぐ3 青木康弘


 前回に引き続き、不正・不祥事を仕組みでどのように抑止するか説明しよう。金銭横領は数百万円単位の損失となることも珍しくなく、会社の資金繰りに影響を及ぼす。経営者が評価し信頼を寄せている幹部スタッフが引き起こすケースが多く、すっかり人間不信になってしまう経営者もいる。このような事態に陥らないように日頃から仕組みで抑止しよう。

 5、不祥事発生時の対応手順を決めておく

 不祥事は予期せず起きるものである。懲戒の内容は就業規則で定めているケースが多いが、本人を処分して解決というほど単純なものではない。次のようなテーマについては初動を間違えないよう、平時に対応手順を決めておくと良いだろう。セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、暴行、交通事故、薬物、ギャンブル、借金、SNS投稿(企業の信用を毀損させるもの)。

 例えば、社内でセクシャルハラスメントが起きた場合の対応手順はどのようにすべきか考えてみよう。初動段階で加害者に事情聴取しても否認される恐れがある。加害者に気づかれないよう被害者や関係者に事情聴取し、また被害者の申告を裏付けるような客観的な証拠を見つけることが初動となる。

 事情聴取は誰が行うのかということも不祥事の内容に応じてあらかじめ決めておくと良い。被害者が女性の場合には女将や若女将、女性の担当者が対応するのが望ましいだろう。暴行や交通事故、SNS投稿など、最終的に企業として対外的な謝罪や責任の表明が必要となる場合には、経営者が陣頭指揮をとった方が良い。

 事情聴取で確認する事項も箇条書きで整理しておこう。例えば、被害の内容(行動や言動)、時期、客観的な証拠となり得るもの(目撃者、SNSのメッセージなど)、被害者として望んでいること、プライバシー保護の約束などである。

 被害者や関係者からの裏付けが取れたら加害者に事情聴取し、自宅待機を命じる。被害者への接触を禁じ、会社支給のパソコンや携帯電話も返却させる。就業規則の懲戒規程に照らし合わせて、処分内容を経営陣または賞罰委員会で決定し本人に通知する。処分内容を決定する際に、日常業務は頑張っている、加害者がいなくなると人手が回らなくなるなどの理由で処分の軽減を行うことは本末転倒である。

 規程が形骸化しないよう厳正に対処することをあらかじめ決めておくことが望ましい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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