前回に続き、M&Aの実施に当たり失敗しないためのポイントを紹介しよう。事業拡大、発展のチャンスとなる成功事例もあるが、中には本業の業績悪化につながった失敗事例も出てきているので注意したい。
4、案件の持ち込みルートに注意する
M&Aに関与するのはまっとうな会社ばかりでない。高額の報酬を狙ってブローカーが介在するケースもある。厄介なのが複数のブローカーが関与するケースである。口頭伝承に基づく持ち込み情報だと、購入検討に必要な情報が欠落しているばかりか、情報そのものの真偽が疑わしい。実在しない案件の持ち込みすらある。このようなブローカーに振り回されないためにルート確認をしっかりと行いたい。
ルート確認するには、接触してきた仲介会社が売り手と直接つながりがあるか聞き取りにより確認すると良い。間に複数のブローカーが介在していると、売却に至った経緯や希望する条件、スケジュール、施設の現況などすぐに回答が得られないので察知できる。
5、運営権の譲渡に注意する
異業種から旅館・ホテル業への進出が相次いでいるが、業績低迷から開業してすぐに運営権を手放すオペレーターが増えてきた。このようなケースで注意したいのが賃貸借条件である。家賃や敷金が高すぎたり、短期の定期借家契約だったりとオペレーターに不利な条件が多い。物件を確保したいために、オーナーの無理な要求を受け入れたことが原因である。
このような物件の運営権を譲り受けると、不利な賃貸条件もそのまま継承することになる。賃貸借契約書がどのようになっているか早い段階で情報開示してもらい、詳細確認することが望ましい。
もし不利な条件であれば賃料などの引き下げ交渉を行うか、現オペレーターが営業を止めるまで静観することが望ましい。休業になってから商談した方がオーナーとの条件交渉が有利になる。無計画な旅館・ホテルの尻拭いをさせられないよう注意しよう。
(アルファコンサルティング代表取締役)