前回に引き続き、労働時間を減らしながら売り上げを維持・向上するためのポイントを紹介しよう。仕事のやり方を変えずに新法に対応しようとすると、より多くのスタッフが必要となり、人件費の増大につながる。一方で、時間外労働や有給休暇に関する規制に違反すると、厳しい罰則規定があるので注意したい。
歩行者交通量が多い観光地や都市部に立地する旅館・ホテルは、日中のお客さま対応によって労働生産性が落ちることがある。宿泊売り上げアップに直接的に結び付かないサービス提供のためにスタッフを配置しているケースがあるからだ。
影響度を把握するためには、料飲サービス以外の顧客応対スタッフのシフトを確認すると良い。シフト表から時間帯別の投入人数を合計し、グラフ化すると分かりやすいだろう。すると、チェックアウトからチェックインまでの中間時間帯に多くのスタッフを投入していることがある。
ランチ・売店などの営業によって収益アップにつながっていれば良いが、そうでない場合には無償のサービスによって生産性が悪化している可能性がある。次のような施策を検討してみよう。
1、例外対応の有料化
お客さまが対価を払っても受けたいサービスならば有料化を検討してみよう。例えば、アーリーチェックインの有料化である。日中に来館されるお客さまの中には、早く客室を利用したいと考える方がいる。特に訪日外国人は思いがけない早い時間に到着することがある。このような場合は、積極的にアーリーチェックインを提案することをお勧めする。
時間当たりの利用料金を定めた上で、フロント係がいつでも予約状況、客室清掃状況を確認できるようにしておけば良い。レイトチェックアウトも同様である。客室稼働に余裕があれば、10時までのチェックアウトを急かすのではなく、有償で時間延長の提案をすることをお勧めしたい。
2、例外対応の値上げ
お客さまから対価をいただいているサービスであっても、スタッフの負荷に見合わなければ値上げを検討しよう。例えば、宅配便の発送業務の値上げである。場所と手間がかかる割に実質無償で対応していることが多い。
もし日中のスタッフの負担になっているのであれば、思い切って値上げすることをお勧めする。業者への支払額に取扱手数料を上乗せする形式であれば、受け入れてもらいやすいだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)