前回に引き続き、アフターコロナ下でも収益力の高い施設になるための取り組みポイントを紹介しよう。2020年は新型コロナに翻弄(ほんろう)された年だった。秋口から本格化したGo Toトラベル事業により観光客回復の道筋が立ったかと思いきや、第3波により先行きが不透明になってしまった。21年中盤までには訪日外国人受け入れ再開やワクチンの普及、オリンピック開催決定などにより正常化を期待したい。
3、宿泊単価、稼働率、スタッフ数の最適なバランスを見極める
21年の収支計画は昨年や一昨年の実績を踏襲して策定することは困難だ。これまでは昨年実績を参考に、売り上げを数%~10%程度引き上げたものを営業目標として掲げて取り組んできたと思う。
今年は計画の根拠となる昨年実績がなく、新型コロナの影響が続いていることから一昨年の実績も利用することができない。このような場合は、収支計画を複数パターン策定し、環境変化に迅速に対応できるようにしておくことをお勧めする。基準となる指標は、宿泊単価、稼働率、スタッフ数(人件費)である。
宿泊単価は、Go Toトラベル適用期、需要低迷期、需要回復期に分けて料金幅を決めておくと良い。その時の状況によって最適な宿泊料金は異なる。価格変更を柔軟に行うことが望ましいが、低迷する旅行需要に合わせすぎると安売りしすぎてしまうリスクがある。あらかじめ料金幅を決めておくことで過度な価格競争に巻き込まれることを避けることができるだろう。
稼働率は、現状のスタッフで宿泊客の対応が可能な上限と休館を決断する下限の目安を決めておくと良い。Go Toトラベルによる書き入れ時だからといって、スタッフを増員すると閑散期に固定的な人件費で苦しむことになる。満室を目標とせず、繁忙期でも稼働率の上限が70~80%となるよう宿泊単価を値上げして現状スタッフでこなし切れるよう工夫した方が利益率は高いだろう。稼働率が一定以下になった場合には、休館日を増やすなど柔軟な対応をしたい。メリハリをつけないと赤字が膨らむ要因となる。
スタッフ数は、宿泊単価と稼働率について、強気、中立、弱気の3パターンで必要スタッフ数を見積もり、収支予想を作ることをお勧めする。衛生面に配慮しながら宿泊客に対応するためには多くのスタッフを必要とする。高稼働が必ずしも高収益につながらないことが分かるはずだ。売り上げよりも利益、キャッシュフローを意識した運営を心がけよう。
(アルファコンサルティング代表取締役)