前回に引き続き、アフターコロナ下でも収益力の高い施設になるための取り組みポイントを紹介しよう。2020年は新型コロナに翻弄(ほんろう)された年だった。秋口から本格化したGo Toトラベル事業により観光客回復の道筋が立ったかと思いきや、第3波により先行きが不透明になってしまった。21年中盤までには訪日外国人受け入れ再開やワクチンの普及、オリンピック開催決定などにより正常化を期待したい。
7、コロナ禍でも宿泊者が集まる施設をヒントにする(2)
露天風呂付きの客室や知名度の高い高級旅館・ホテルも業界平均より高稼働を実現している施設が多いと考えられる。これはGo Toトラベルの影響によるものだけではない。新型コロナ流行前から、高単価の客室は宿泊需要に比べて供給量が少なく、一般客室よりも高稼働の状況が続いていた。
グループサイズの縮小による旅行のプライベート化、金融緩和による所得格差の拡大、IT業界を中心とするニューリッチ層の出現、別荘に変わる滞在拠点ニーズなどにより、より良い客室を求める消費者は増加傾向にあるだろう。今後、施設の改装を予定しているならば、思い切った客室のグレードアップを検討したい。
連泊に対応した設備のあるコンドミニアムやリゾートヴィラも人気を集めている。在宅ワークやテレワークが当たり前となり、自宅や職場を離れてワーケーションやブレジャーを楽しむ消費者が増えてきていることが理由だろう。OTAの検索ランキングをみても、自炊や炊飯といったキーワードが上位にランクインしている。
炊飯器や電子レンジ、大型冷蔵庫、食洗機、調理器具といった長期滞在に必要な設備が完備されていることが特徴だ。もともと日本旅館は連泊に向いていない間取り、オペレーションとなっており、連泊の取り組みへのハードルは高い。しかしながら、ニーズが高まっていることは確かなので、連泊対応の和風リゾート、和風コンドミニアムといったコンセプトで業態転換を検討するのも良いだろう。
新型コロナの影響によって消費者の嗜好は大きく変わった。終息しても元のかたちに戻ることはない。逆境をチャンスと捉え、業態転換にチャレンジしたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)