前回に引き続き、お金をかけずに日々の業務を効率化する方法を紹介しよう。観光業でもDXが注目されるようになったが、高額なシステム導入費用がネックとなり取り組みに躊躇(ちゅうちょ)してしまう。予約業務は効率化したが、日々の業務は昔のままで全く効率化が進んでいない施設は少なくない。
(7)備品やアメニティを最小限とする
客室のテーブルに備品がありすぎて、乱雑になっていたり、清掃の手間がかかったりしていないだろうか? 施設内のレストランやお土産の案内など売り上げにつなげようという努力は理解できるが、古いカタログが更新されることもなく置いてあるのは逆効果である。宿泊約款など最低限のものだけ残し、それ以外は全て撤去することをお勧めする。
以前は、売り上げ向上策として客室内にポップやラミネートされたチラシを置くことが効果的であったが、今は清潔感のあるシンプルなデザインの客室が好まれる。また、現代の消費者はデジタル情報に慣れ親しんでいるので、紙のチラシを好まない傾向にある。
古いCDプレイヤーや家電製品があるのも逆効果だ。ほこりがたまりやすく不潔感を与えやすい。せめて小型のBluetoothスピーカーなどを設置しよう。布や透明ビニールクロスもカバーとして使わない方が良い。ほこりがついたり黄ばんだりなどで古めかしく見えてしまう。
アメニティーも消費者の環境意識の高まりから敬遠される傾向にある。以前は充実したアメニティーが高級旅館・ホテルの証であった。しかし、今は歯ブラシですらフロントで必要な分だけ取っていくという施設は珍しくない。アメニティー自体はデザインや素材にこだわったものを準備しながら、客室内に配置せず提供も最小限にとどめることをお勧めする。
備品やアメニティーは最小限にする一方で、充実させたいのがパブリックにおける無料サービスである。
チェックイン後や湯上がり後の休憩時にゆっくりとくつろげる場所で、無料のコーヒーや地元産のドリンク、アイス、夜食などを提供すると喜ばれるだろう。人の手間をかけず、あえて無料とすると良い。有料化すると、受付スタッフやPOSレジが必要となる。最近ではビジネスホテルで無料サービスが当たり前になっており、消費者の期待値が高まっている。
省資源化省力化を図りながら顧客満足度を高めていきたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)