【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 638】インボイス制度の賢い対応法4 青木康弘


青木氏

 前回に引き続き、インボイス制度の賢い対応法について説明しよう。来年10月1日よりインボイス制度が導入される。インボイス制度とは、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式をいう。今回の制度改正は旅館・ホテルの日常業務に大きな影響を与えるものである。また、情報システムの改修も必要となってくる。今のうちから理解を深め準備を進めておこう。

 課税売上高が1千万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除される免税事業者になることを選択できる。旅館・ホテルは、免税事業者と取引する機会が多い。インボイス制度導入後は、課税事業者とは異なる取引上の配慮が必要となるので留意しよう。

 免税事業者の取引先として想定しうるのが、少額の料飲材料や土産品、館内備品、消耗品等の物品を扱う事業者・個人、仲居や清掃係、調理係、ホームページ・OTA・SNSの運用等の役務を提供する事業者・個人である。

 物品を扱う免税事業者は、自らの仕入れに係る消費税を負担しているため、その分は取引価格に織り込まれる必要がある。例えば、税別の取引価格が10万円、取引価格に対する課税仕入れの割合が70%とすると、免税事業者は7千円消費税を負担していることになる。免税事業者からの仕入れだからといって消費税相当分を全く支払わないことは、相手先に消費税負担を強いることになり、優越的地位の濫用として問題になるだろう。

 役務を扱う免税事業者は、インボイス制度の導入前後で仕入れに係る消費税負担の影響は小さい。しかし、一方的に消費税相当額の値引きを要請することは、独占禁止法や下請法に抵触するおそれがあるので注意したい。

 同様に、免税事業者に対して、インボイス発行事業者になるよう登録を要請すること自体は問題ないが、要請に応じない事業者に対して一方的に取引価格を引き下げたり、要請に応じた事業者に対して消費税相当額を支払わず取引価格を据え置いたりすることは、独占禁止法や下請法に抵触するおそれがあるので注意したい。

 インボイス制度導入後に免税事業者と取引する場合には、見積価格が税別か税込みか、消費税相当額を支払うか否かについて、取引先とよく協議を行う必要がある。現在でも税別か税込みか判断できない見積書は少なくない。請求書を受け取った際に認識の齟齬(そご)が表面化しないよう、お互い確認しよう。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 


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