前回に引き続き、有望とされる多角化分野を取り上げて収益アップを図る方法について紹介しよう。旅館・ホテルの稼働率は復調傾向にあるものの、中期的に見ればインバウンドや高付加価値旅行を除き、宿泊旅行市場は縮小すると見込まれている。国内観光客をメインターゲットとした宿泊施設や観光施設は、既存事業にとどまらないさまざまな収入源を確保しておくことが望ましい。
「事業再構築に向けた事業計画作成ガイドブック」をみると、他業種の多角化事例についても紹介されている。中には、旅館・ホテルや観光業からでも多角化しやすい事例も記載されているので参考にすると良い。
例えば、有望度の高いテーマとして、EC・通販を介した自社商品の販売、地元食材や特殊冷凍技術等の付加価値を打ち出した冷凍食品事業の展開、スイーツ・菓子の製造・販売、惣菜の製造・販売、工芸やアクティビティ等の体験消費サービス、レンタカー、プログラミングやロボット教室などの教育研修事業、クリーニング、洗濯代行、動画撮影スタジオ、コワーキングオフィス、個室フィットネス等が挙げられている。
地域によってニーズの有無や参入のしやすさは異なるが、既存事業で培った宿泊や飲食、サービス提供のノウハウを生かせる分野といえる。施設やスタッフはいるが、ノウハウがないという場合はフランチャイズ加盟を検討するのも良いだろう。他に検討可能なユニークなテーマとしては、プライベートサウナ、アスリートやスポーツ客向けサービス、移住体験等の移住希望者向けの支援サービス、家事代行や清掃サービス、エステ・脱毛等の美容サービス、高齢者向け見守りサービス等がある。前述した有望度の高いテーマよりも必要とされるノウハウや投資額の面で参入障壁は高いが、立地によっては高い収益性が期待できるだろう。
事業の多角化は、異業種からのノウハウ吸収や人材採用力のアップ、社内の活性化につながる。社内のマンネリ感、停滞感を課題としているならば、どのようなテーマでも構わないので、まずは取り組んでみることをお勧めする。
(アルファコンサルティング代表取締役)