【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 669】業務効率化の実践テクニック〈5〉 青木康弘


 前回に引き続き、業務を抜本的に見直し、効率化を図るための実践テクニックを紹介したい。旅館・ホテル業界では深刻な人手不足が問題となっている。その主な原因の一つは、労働生産性が低いことである。作業が効率的でないために、厳しい労働環境でありながら十分な賃金を与えられず、悪循環に陥りやすい状況となっている。

 6.業務をシステム化する

 業務の簡素化が完了したら、次は業務のシステム化を検討しよう。観光業界のデジタル変革(DX)の波に乗り、宿泊業界向けのシステムソリューションが次々と提案されている。しかしながら、システム導入が業務効率化の鍵となると思い込むのは早計だ。業務の削減、統合、再配置、単純化を推進した上で、システム導入を検討するのが妥当なアプローチだ。次のような問題が存在する場合、その原因解明が先決となる。

 (1)離職者が多い=離職率が高く人手不足に陥っているからといって、その解決策としてシステム化を考えるのは効果的ではない。まず、離職率が高い要因を特定し、対策を打つことをお勧めする。多くの場合、厳しい業務負荷と職場の雰囲気の悪さが原因となる。業務負荷の軽減はシステム化である程度解決できるかもしれないが、職場の雰囲気改善はそれだけでは難しい。経営者や上司とスタッフの関係改善、ワークライフバランスの見直し、コミュニケーションの活性化を図ることが重要だ。

 (2)昇格希望者が少ない=管理職になりたいと考える人が少ない施設では、管理職の労働負荷の軽減を優先しよう。残業が常態化している職場では、その労働環境が当たり前のものと認識され、システム化による業務量の削減への意欲が低下するからだ。

 (3)過去のやり方に固執する=過去の方法に固執する職場では、システム化が困難となることが多い。仕事を奪われることを恐れ、自分の業務をブラックボックス化するスタッフは少なくない。そうした考えを持つスタッフがいる限りシステム化は阻害されるだろう。

 (4)改善策が多い=一見すると改善策が多いというのは良いことのように見えるが、実際には業務改善の観点から見ると弊害となることがある。改善策を実施する際には、どのようなワークフローが労働負荷を増やさず、ミスなく効率的に実施できるか、そして効果が見られない場合にはいつまでに取り止めるかという内容を明確にしてから進めることが望ましい。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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