前回に引き続き、施設の立地に応じた戦略の考え方を紹介したい。旅館・ホテルの経営者にとって、「高単価路線を追求していくか、低価格路線に転換するか」「昔ながらのフルサービスの旅館を維持するか、ホテルのようにサービスを省力化するか」「本業に特化するか、多角化するか」は悩みの種である。流行だから、競合他社に負けたくないと安易に方針を決めて取り組むと、予期せぬ失敗に苦労することになる。
(2)立地と低単価路線の整合性
低単価路線を採用する際に、「良い低単価」と「悪い低単価」が存在する。良い低単価とは、質の良いサービスを求める大量の消費者層をターゲットにし、安価な宿泊料金を設定することをいう。この方法を採用すれば、安定的な稼働が期待できる。顧客満足度が高い低単価施設はリピート客の支持を得やすく、業歴を重ねるとさらに安定感を増すことが可能となる。ただし、単に宿泊料金を安くするのではなく、利益を出すためのコスト構造を整備することが必須である。抜本的な省力化と省人化の取り組みが実現のカギとなる。
悪い低単価とは、運営コストを賄うことができず、施設への投資資金が確保できないレベルでの無計画な安売りをいう。運営体制や手法が旧態依然のままに、システム導入やwebマーケティングを表層的に行っているだけで、抜本的な収支構造の見直しができていないケースが多い。閑散期に宿泊料金の相場が極端に下がる温泉地が該当するだろう。
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