【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 685】宿泊料金の値上げ方法〈3〉 青木康弘


 前回に引き続き、円滑に値上げするための方法を紹介しよう。多くの旅館・ホテルで値上げが実施・検討されているが、人件費や水道光熱費、工事費をはじめとする多くの費用が宿泊料金の上昇を上回るペースで大幅に値上げされている。速やかに対策を講じなければ、赤字に転落するリスクもある。

 宿泊料金は、旅館・ホテルの個々の魅力や努力だけで決まるわけではなく、観光市場の需要と供給のバランス、観光地の立地、地域の価格相場など外部要因に大きく依存している。新型コロナウイルスの影響が収束し、リベンジ消費や円安の影響でインバウンド観光が急回復したことにより、国内の宿泊施設は客室不足に陥り、結果として宿泊料金が上昇している。特に、インバウンドの個人旅行者や高所得層が訪れるエリアは、高額な宿泊料金が設定されやすい状況にある。

 地域の価格相場は、代表的な大型旅館・ホテルの価格設定によって形成される。知名度が高く、予約サイトでも上位表示されやすい大型館は、消費者への露出が高く、宿泊先を選ぶ際の基準となりやすい。こういった施設が値上げに保守的であったり、地域の他ホテルを意識して安い価格設定をしていたりすると、地域全体の価格相場が低く抑えられる要因となる。

 宿泊施設が直面するこのような問題は、外部環境による要因が大きいため、単独での対策では解決が難しい。地域単位で値上げに対する機運を高め、協力して取り組む必要がある。

 地域を代表する施設は、過度な稼働率の追求をやめて、地域内の価格競争を控えることが望ましい。稼働率を重視すると、値下げにより地域の二番手旅館から宿泊客を奪うことになる。すると値下げ合戦が始まり稼働率は多少上がるものの、宿泊料金の相場が下がってしまい自分の首を絞めることになる。

 地域を代表する施設は、他地域において高単価戦略で成功している施設を参考にし、新たな顧客層を引きつけることに力を入れるべきである。これにより、地域全体の価格相場の向上や収益性の改善が期待できるだろう。

 (アルファコンサルティング代表取締役)

 
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