旅館・ホテル業界の人手不足は依然として深刻であり、この状況は「2025年問題」によりさらに悪化する見込みである。2025年問題とは、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる超高齢化社会への移行に伴い、雇用や医療、福祉の分野で生じるさまざまな課題を指す。
この問題は単なる労働人口の減少にとどまらない。旅館・ホテルで接客や調理スタッフとして働く可能性のあった人材が、医療や福祉分野に流出することによって、人材不足がより深刻化する懸念がある。今回のコラムでは、こうした状況下で人材をスムーズに採用するためのポイントを説明したい。
まず、求職者に対して自施設の魅力を効果的に伝える工夫が必要である。大手チェーンは採用情報を積極的に発信しているが、中小規模の旅館・ホテルではそのような機会が限られているのが現状である。ただ単に求人サイトに代わり映えのしない情報を掲載するのではなく、公式サイトを活用して採用情報を充実させることが求められる。スタッフの声や職場の雰囲気を写真や動画で紹介することで、求職者にリアルな魅力を伝えることが可能である。
職場の魅力や環境の良さをSNSで発信することも有効である。もしSNSの運用が難しい場合は、クラウドソーシングを利用して外部の業者を活用する方法も考えられる。予算を抑えながら求職者への情報発信を強化することができる。
次に、募集職種の名称や仕事内容の見直しも効果的な手段である。従来の「客室係」や「接客係」といった職名に代わり、「運営スタッフ」や「サービススタッフ」、「サポートスタッフ」など、より幅広い業務に対応できる役割として募集することで、求職者の関心を引きやすくなる。また、入社後の希望や適性に応じて柔軟に配属を変更できる体制を整えることで、応募しやすくすることも効果的だ。
さらに、居住環境の整備も重要である。今後、外国人スタッフを含めて地元以外からの採用を増やしていくためには、社員寮の整備が不可欠である。近隣の中古アパートを取得しリノベーションを行うことも一つの手段である。バス・トイレ・キッチン付きの個室を整備し、プライバシーを確保することが求められる。加えて、休暇時にリフレッシュできるように、スポーツクラブなどの福利厚生サービスへの加入や、車やバイクの貸し出しなども検討したい。
(アルファコンサルティング代表取締役)