【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 730】2025年問題と旅館・ホテルの人材戦略(1) 青木康弘


 前回に引き続き、2025年問題により労働人口の減少や、医療・福祉分野への人材流出が深刻化するなかで、旅館・ホテル業界で人材をスムーズに採用するためのポイントを説明したい。2025年問題とは、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる超高齢化社会への移行に伴い、雇用や医療、福祉の分野で生じるさまざまな課題のことをいう。

 採用時の給与水準は、常に見直すことが望ましい。他業種の平均給与は旅館・ホテル業界を上回るペースで上昇している。少なくとも半年に1回は他業種を含めた市場の相場をチェックしておこう。

 Indeedの調査によれば、旅館業務の募集時の給与水準は、月給で24万5千円、日給で1万5千円、時給で1200円程度である。週40時間勤務を前提とすると、日給が最も高く、時給が最も安い。待遇で差別化を図るならば、時給を高めに設定した求人を行うと良いだろう。仮に月180時間の勤務とすると、時給換算では1360円となる。地域にもよるが、この水準であれば求職者の応募候補となりやすい。

 時給計算を基にした賃金設定は、多様な働き方への対応にもつながる。かつてはフルタイム正社員の採用が一般的であったが、現在は時短勤務や週4日勤務など、柔軟な働き方が求められている。特に清掃や料飲サービスなど人手不足が顕著な部門では、短期雇用や週払い制度を導入することにより、求職者にとって働きやすい環境を提供できる。短期のアルバイトやパートタイムの仕事を手軽に見つけられるマッチングアプリが導入している即日支払い制度は、求職者にとっての大きな魅力となっている。

 高校新卒者をターゲットとした採用も有力な選択肢である。高校新卒者は、会社の風土になじみやすく、体力もあるため、業界にとって貴重な人材である。

 産労総合研究所の調査によると、高卒初任給の水準は18万8千円であり、旅館業務の募集時の平均月給より5万7千円も低い。他業種よりも格段に魅力的な給与水準を提示することで、採用の機会が広がるであろう。

 求人票の作成にあたっては、職場の魅力や働きやすさを具体的に伝え、学校関係者の理解を得るための詳細な会社案内を用意するなどの工夫も不可欠だ。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 
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