前回に引き続き、2025年問題により労働人口の減少や、医療・福祉分野への人材流出が深刻化するなかで、旅館・ホテル業界で人材をスムーズに採用するためのポイントを説明したい。2025年問題とは、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる超高齢化社会への移行に伴い、雇用や医療、福祉の分野で生じるさまざまな課題のことをいう。
厳しい採用環境の中で必要な人材を確保し、長く働き続けてもらうためには、従業員満足度の向上が不可欠である。そのため、従業員満足度調査の実施は有効な手段の一つといえる。
この調査の目的は、従業員が日々感じている職場環境の問題点や改善要望を具体的に把握し、効果的な対策を講じることにある。調査項目は多岐にわたり、勤務時間やシフトの柔軟性、給与や福利厚生の充実度、上司や同僚との人間関係、業務内容への満足度などが含まれる。また、中抜け勤務や夜勤の負担、顧客対応時のストレスに関する意見を収集することで、宿泊業特有の課題を明確にすることができる。
調査を実施する際には、従業員が本音で回答しやすい環境を整えることが重要である。匿名性を確保することはもちろん、質問項目は分かりやすく、回答の負担が少ない形式にすることが望ましい。また、自由記述欄を設けることで、個々の具体的な意見や提案を収集しやすくなる。Googleフォームなどを活用したオンラインアンケートを導入すれば、効率的に結果を集計することができるだろう。
調査結果に基づいて、具体的な改善策を速やかに実施することが求められる。例えば、「給与水準が低い」という声が多ければ、業界平均や地域の競合と比較し、適正な水準への見直しを図る必要がある。また、「業務負担が大きい」という意見が目立つ場合は、業務の簡素化やシステム導入による自動化などを進めるべきである。
アンケート結果は採用活動にも活用できる。職場環境の改善により従業員満足度が向上していることを具体的に示すことで、求職者に対し「働きやすい職場である」という信頼感をアピールできる。特に、フロント業務や接客業務における成功事例を紹介することで、旅館・ホテルの魅力をより効果的に伝えることが可能となる。
(アルファコンサルティング代表取締役)
※観光経済新聞11月18日号掲載コラム