前回に引き続き、旅館・ホテル業にメリットがある、または影響が大きいと考えられる税制改正のポイントを紹介したい。今年の改正は、いわゆる「年収103万円の壁」への対応など、個人所得課税に関する論点ばかりがニュースで取り上げられている。しかし、旅館・ホテルの経営者や財務担当役員、経理部長が知っておくべき税制改正も数多く存在する。
「外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し(消費課税)」:外国人旅行者向けの消費税免税制度が大幅に見直されることとなった。この改正は、外国人旅行者による不正利用の防止と利便性の向上を目的としている。訪日外国人観光客を対象に免税品を取り扱う旅館・ホテルにとっては、注目すべき改正といえる。
今回の改正で特に重要なのが、「リファンド方式」の導入である。この方式は、ヨーロッパ諸国やアジア主要観光地では一般的なものである。免税店が旅行者から一時的に消費税相当額を預かり、出国時に購入品の持ち出しが確認された場合に、その消費税相当額を返金する仕組みである。外国人旅行者にとっては空港等で返金手続きの手間がかかることになるが、不正な横流しや未納問題の解消が期待される。
免税対象物品の範囲の見直しも注目ポイントだ。従来の「一般物品」と「消耗品」という区分が廃止され、特殊包装や購入限度額、免税対象物品の範囲に関する要件も撤廃される。この改正により、外国人旅行者は自由に消費できるようになる一方で、税抜100万円以上の高額商品にはシリアルナンバーなど詳細情報を国税庁に提供する義務が課されることになる。また、免税対象物品を免税店以外から海外に配送する「別送」は今年の3月末で廃止されるが、免税店から直接海外に配送する「直送制度」は存続される。
今回の改正により、免税対象物品を取り扱う旅館・ホテルや免税品店は、新しい制度に合わせた対応が求められる。実際の運用開始は来年の11月1日からとなるが、それまでに業務プロセスの変更やスタッフのトレーニング、顧客への周知などの準備を進めたい。レジや販売システム等の機器導入や設備投資が必要となる可能性があるため、当該設備を対象とする補助金制度や税制優遇措置について、早めに情報収集を進めておくことをお勧めする。
(アルファコンサルティング代表取締役)
(観光経済新聞2025年1月27日号連載コラム)