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観光業界は、訪日外国人客を中心に宿泊需要が活発化しており、追い風となる要素が多い。一方で、労働力不足や物価上昇、デジタル化の加速など、旅館・ホテルを取り巻く経営環境は複雑化している。次世代を担う経営者には、将来の動向を見据えながら、自社の課題を正しく把握し、改善施策を打ち出すための冷静な判断力が求められる。
本コラムでは、次世代経営者が自社の課題を発見・分析し、効果的な対策につなげるためのポイントを紹介したい。数字や現場の声をもとに新しい価値を生み出し、持続的な成長をめざす際のヒントとして活用してほしい。
1.数字の目安を決める
月次試算表や決算書といった会計データをどのように読めばいいのか分からず、経理担当者や顧問税理士の説明を聞いても要領を得ない旅館・ホテルの経営者は少なくない。専門用語が難解であることもあって、「どこが自社の弱点なのか」「どう優先度をつけて改善すべきなのか」が分かりにくいのが要因である。
そこで推奨したいのが、自社に合った「基準値」を設定する方法だ。まず、過去5年程度の決算書や業界平均(日本旅館協会や観光庁、日本政策金融公庫などが公表する資料)の数値を参考に、自社の実力相応といえる売り上げ・経費ラインを算出する。その値から売り上げを数%上乗せし、経費を1~5%下げた目標値を設定することで、どの項目をどう改善すればよいか明確になる。経費を売り上げ比率で示しておけば、優先的に取り組むべき費用項目の見極めも容易になる。
たとえば、消耗品費が年間250万円で業界平均が200万円、基準値を220万円と算出した場合は、次のような手順で問題点を把握できる。(1)総勘定元帳を見て、取引業者ごとに年間いくら支払っているか合計値を出す(2)主要品目の仕入単価リストを作る(3)ネット通販などで相場を確認する(4)複数の新規業者に見積もりを依頼する(5)他の施設で使用している消耗品を調べて、自社が必要以上に高いグレードのものを使っていないか確認する。このように数字を基準とすれば、改善効果も客観的に測定しやすくなるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)
(観光経済新聞2025年2月3日号掲載コラム)