【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 740】次世代経営者のための課題発見方(2) 青木康弘


 前回に引き続き、次世代経営者が自社の課題を発見・分析し、効果的な対策につなげるためのポイントを紹介したい。数字や現場の声をもとに新しい価値を生み出し、持続的な成長をめざす際のヒントとして活用してほしい。

 2.お客さまが来ない理由を見つける

 入り込みが減少すると、「時期的に仕方がない」「景気のせいだ」とあきらめてしまうことがある。しかし、どのような状況でも着実に集客を伸ばす施設や地域は存在する。違いを生むのは、原因の分析と対策をどれだけ綿密に行うかである。

 お客さまが来ない理由は、「露出不足」と「商品不足」の大きく二つに分けられる。露出不足は、旅行会社やウェブ媒体などへの掲載やPR活動が少ない場合に起こる。一方の商品不足は、料理やサービスがどこにでもあるような内容で差別化できていない、リニューアルが長期間行われていない、サービスレベルが低いなどが考えられる。

 特に多いのは、「広告宣伝には投資しているが、商品に独自性がなく反響につながらない」というケースである。経費削減に注力するあまり、新商品の開発や企画が後回しになり、結局同じような料理や宿泊プランを続けるだけで終わっていることが多い。「ここでしか体験できない」「これを食べるために行きたい」と思わせる魅力の創出が重要である。

 3.スタッフの声を生かすしくみをつくる

 地域観光の振興や業界行事への参加など、次世代経営者には多面的な役割が求められる。その結果、現場の課題を自分一人で把握しきれず、問題を放置してしまうことがある。右肩上がりの時代ならば多少の見落としも致命傷にはならなかったが、変化の激しい時代には小さなほころびが大きなダメージにつながる可能性がある。

 そこで必要なのが、旅館・ホテルのスタッフを経営者の“アンテナ”として活用することである。役員や管理職だけでなく、末端スタッフからも直接意見や提案が届くルートを整備し、朝礼や会議などで情報提供を積極的に呼びかける。届いた意見には迅速に返信し、改善策を社内で見える化することで、「経営者が現場の声を本気で受け止めている」と感じてもらえるようにする。こうした仕組みが定着すれば、日々の運営や商品開発に関するヒントが自然と集まるようになる。

(アルファコンサルティング代表取締役)


(2025年2月10日号掲載コラム)

 
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