
前回に引き続き、次世代経営者が自社の課題を発見・分析し、効果的な対策につなげるためのポイントを紹介したい。数字や現場の声をもとに新しい価値を生み出し、持続的な成長をめざす際のヒントとして活用してほしい。
⑥リアルタイム経営を行う
変化の速い時代においてタイムリーな判断を下すためには、館内のさまざまな数値や現場の声をリアルタイムに一元管理する「リアルタイム経営」が欠かせない。これは、高価なシステムを導入しなくても、会計ソフトや電子タイムカード、在庫管理ソフトなど、比較的導入しやすいツールを組み合わせることで実現できる。
たとえば「先予約の進捗(しんちょく)度」を毎月チェックすれば、数カ月先の売り上げ予測が見え、必要に応じて販売促進策を早めに打つことができる。人件費の抑制や従業員負担のバランスを測るには、「人時売り上げ(売り上げを総労働時間で割ったもの)」を算出し、日ごと・時間帯ごとの最適配置を模索するのが有効である。料理原価は、「1品当たりの原価」を把握することで、具体的なムダや調達先の課題を特定しやすくなる。
こうした指標をリアルタイムに管理し、必要に応じて即座にテコ入れを行うことで、不確実な要素が多いなかでも堅実に利益を確保していくことが可能である。
観光需要が活発化するなか、旅館・ホテルの経営環境は引き続き変化のスピードが速く、次世代経営者にとってはまさに正念場といえる。現状に満足せず、「数字の目安を決める」「お客さまが来ない理由を見つける」「スタッフの声を生かすしくみを作る」「売れない商品・サービスを徹底的に直す」「ほかの業界のやり方を参考にする」「リアルタイム経営を行う」という六つの視点に基づき、自館ならではの強みを再発見し、持続的な成長を目指すことが望ましい。
これらのテーマを着実に実践することで、熾烈(しれつ)な競争環境においても揺るぎない存在感と魅力を確立することができるだろう。次世代の旅館・ホテル経営を担う皆さまが、業界の最前線で経営課題の発見と解決に積極的に取り組まれることを期待したい。
(アルファコンサルティング代表取締役)
(観光経済新聞2025年2月24日号掲載コラム)