【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン356】金融仲介機能のベンチマーク その5 青木康弘


 前回に引き続き、金融庁から公表された「金融仲介機能のベンチマーク」について紹介しよう。全国の金融機関が対象となっており、皆さまのメイン行の重役も対応に追われていることだろう。当然のことながら、旅館・ホテルに対する取引方針にも影響するので理解しておくことをおすすめする。

 各金融機関が自身の事業戦略やビジネスモデルなどを踏まえて選択できる項目を「選択ベンチマーク」というが、50項目にも及ぶので旅館・ホテルに関係の深い項目だけ紹介しよう。

5、「ファンド(創業・事業再生・地域活性化等)の活用件数」

 今回の金融庁の方針によって、今後は金融機関からファンド活用の提案が増えていくだろう。旅館・ホテルの本業が堅調であれば、創業ファンドや地域活性化ファンドを活用して新規事業への進出を検討するのも良い。

 提案がなくても、関心があってチャレンジしたいということであれば、中小機構や各地域のファンドに窓口があるので相談すると良い。投資を受けるには、経営計画や資金計画が必要だ。自力で作るのが難しければ信頼できる専門家に相談すると良いだろう。

 事業再生ファンドを金融機関から提案された時は冷静な判断が必要だ。皆さまの会社の再生に本当に必要なものか、5年後、10年後の将来がどうなるか良く理解してから導入判断したほうが良い。

 自分たちが新規融資をしたくないからファンドの導入をすすめるという悪質なケースもある。

 ファンドからの出資や債権買い取りは融資に比べて一般に金利が非常に高く、また、5年から最長でも12年足らずで株式や債権が売却されることがあるので注意が必要だ。自社で買い戻したり、他の金融機関から肩代わり融資を受けたりするだけの収益力が回復していれば良いが、失敗すれば他社に買収されることもありうる。

 ファンドから送り込まれる再生請負人にいじめられ、苦労する旅館・ホテルの経営者は少なくない。ファンドの担当者の言葉を信じたばかりに、毎日再生請負人から罵倒され、心労がたたって体を壊してしまう経営者もいる。

 旅館・ホテルの永続につながらない不本意な提案は断る勇気をもとう。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

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