旅館・ホテルのスタッフ不足は年々深刻化しているが、それ以上に大きな問題となっているのが運営の担い手不足である。社長の後継者不在や幹部の退職を理由として、直営からオペレーター(運営委託会社)への委託に切り替えたいと考える旅館・ホテルのオーナーは少なくない。
一方で、「最初に提案されていた話と違う」「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースも散見される。今回コラムでは、オペレーター選びに失敗しないためのポイントを紹介しよう。
1、オペレーターの実力を冷静に見極める
オペレーターとひとくくりに言っても受託条件や得意とする業態、実力、報酬水準はさまざまである。最近では不動産投資家(REITを含む)が旅館・ホテル投資を積極的に行っていることもあり新規参入が相次ぎ、オペレーターの選択肢は増えたが、その内実は玉石混交である。うわべだけの強気な提案書やセールストークを鵜呑みにせず、冷静に比較検討することが望ましい。
2、契約形態ごとのリスクを良く理解する
旅館・ホテルのオーナーとオペレーターとで交わす契約はさまざまであるが、代表的なものはマネジメントコントラクト契約(MC契約)、賃貸借契約である。
MC契約は、オペレーターからブランドと支配人、ノウハウを受け入れる一方、売り上げ・GOP(償却前営業利益に近い概念)の数%をオペレーターへ報酬として支払う契約形式である。海外の著名なホテルチェーンで利用される契約形態であり、契約方式自体は何の問題もないが、実力のないオペレーターの「リスク回避」のために利用されることがある(オーナー側は大きなリスクを負う)。
なぜかというと、オペレーターは売り上げ、GOPに対して数%の報酬は確実にもらえるからである。賃貸借契約だとオーナーに家賃を払った後に、オペレーターが赤字になってしまうリスクがあるが、MC契約だと業績が悪くても一定の報酬がもらえる。オペレーターが赤字になるリスクは賃貸借契約よりも格段に低くなる。
もちろん、MC契約の場合は当初計画した売り上げ、利益を達成できないとオーナーから契約解除を求められることがある。しかしながら、派遣した支配人の給与や持ち込んだ備品類の心配だけすれば良く、賃貸借契約のように保証金が帰ってこなかったり、原状回復を求められたりということもない。夜逃げ同然で撤退することも現実には可能である。
想定外の事態に後悔しないように、オペレーターから提案される契約形態と潜在リスクをしっかりチェックすることをお勧めする。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)