【道標 経営のヒント78】季節感の演出に思う 長谷川貴久


 先日、福岡県の博多へ足を運んだ。キャナルシティにあるホテルに宿泊したのだが、もうクリスマスの帰来が見え隠れする装飾が施されていた。

 宿泊施設では大なり小なり季節ごとの装飾設えを施すところが多いが、リゾートホテルではなくとも季節感の演出も非日常を謳う施設にとっては大事なTO DOの一つである。

 そんなにエントランスの広くない、地方のビジネスホテルでも、カウンターの上に置かれている小さなクリスマスツリーの一つがなんとなく心をほっとさせてくれる。

 シティホテルで言うと、新年~バレンタイン~スプリングフェア~サマーフェア~オータムフェア~(最近だと)ハロウィン~クリスマスといった流れの中にさまざまな企画を盛り込むことになる。

 宿泊チームや営業チームは先行して企画を練っているのだろうが、経営する側には、コストパフォーマンスを考えた時、果たしてこの経費がどれくらいの収益に結び付くかという議論が並走する。

 昨年の今頃の時期、都内のとある施設でクリスマス部屋の企画が持ち上がった。営業チームが装飾を行い、フロントチームが誘導し販売する―というごく一般的な流れだが、いざ完成し内見をしたフロントチームからは「クリスマスルームと銘打つのであれば、あの程度じゃ売れない」の声が多数上がった。

 写真を見せてもらったが、部屋の中身は「クリスマス一色」からはほど遠い完成度で、どうみてもアップグレードとしてプラス料金をいただける水準ではないように思えた。

 低予算で収益拡大を目論んでも、中途半端な予算では現場のモチベーションのプラス材料にはならない。なかなか満足のいく予算の捻出に至らないのも現実である。

 ここで重要なのは、マネジメントをする立場の方が、何を目指しているのかということを明確に打ち出すことが大切である。

 収益を上げるための手段として施す装飾なのか、季節感を打ち出し、印象をお客さまに伝えたいのか、企画発足時、この分岐をどちらに進むか―ということの考え方によって自ずと予算の割り振りが見えてくるように思える。

 陥没事故があった博多駅前の道路は色こそ違えど普通の交差点に戻っていた。
ホテルのスタッフがそこの場所を教えてくれて、到着すると、幾人もの人がスマホ写真を撮っていた。

 これも観光資源なのかと複雑な思いで博多駅のイルミネーションを見つめていたのは私だけではないはずだ。

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