4月1日。いよいよ新入社員がやってくる。
新入社員が明るくあいさつをするだけで、職場の空気も変わり、さわやかな風が吹いてくる。ただ、中には「明るいあいさつとは事務所内に響き渡るような大声で、元気にあいさつをする」と勘違いしている新人もいる。
運動部で発するような「失礼しますッ!」「ありがとうございましたッ!」とやたらと語尾に力を込めたあいさつは、目の前にいる相手に向かってするものではない。距離が近すぎると怒鳴り声のように聞こえてしまうこともある。
社会人のあいさつは「大声=元気」といった単純な図式では語れない。相手が心地よく感じる声の大きさやトーンを意識することで初めて「明るく爽やかなあいさつ」が可能になる。
さて、お辞儀には「真・行・草」と呼ばれる三つのスタイルがある。立礼でいえば「真」のお辞儀とは、腰を45度程度曲げる最敬礼にあたり、「行」のお辞儀は腰を30度程度曲げる敬礼、そして、「草」のお辞儀が腰を15度程度曲げる会釈にあたる。
顧客を出迎えるときには敬礼で歓迎の気持ちを表し、館内の廊下などですれ違うときは立ち止まって軽く会釈をする。そして、見送るときは、深々と頭を下げる最敬礼で感謝の気持ちを伝えるのが基本だ。
このように旅館ではシーンによって三つのあいさつを使い分けているが、この使い分けが不適切だと顧客に不満を抱かせてしまうことになる。
軽く頭を下げる程度の出迎えでは、顧客は軽んじられたように思うだろうし、逆に、館内ですれ違うたびに全ての従業員に立ち止まって深々とあいさつをされたら、顧客は恐縮してしまう。
顧客に気を遣わせるようではプロの接客としては失格だ。顧客に余計な気を遣わせないよう、気を配るのがもてなす側の心得といえよう。
そして、このお辞儀の心得と意味、美しい所作を新人に教えるのが教育係の使命である。
お辞儀を美しく見せるコツは「頭をあげる速さ」と「ため」にある。
頭は首を曲げるのではなく、背筋を伸ばして上体を立てたまま腰から折る。このとき、太ももの後ろが突っ張り、上体を倒すにつれてつま先に力が入って前のめりになる感覚がつかめればOKだ。
そして、頭を下げるときは上体を「一、二、三」と三つ数えながら早めに下げ、一拍分静止したあとゆっくりと上体を起こす。この一拍分静止する「ため」が一連の動作にメリハリをもたらし、お辞儀を美しくみせてくれるのだ。また、上体は「一、二、三、四」と四拍で起こすのがポイントだ。
コツさえつかめば、あとは練習あるのみ。スマホで動作を動画撮影し、改善点を確認しながら練習するのがおすすめだ。