【道標 経営のヒント 127】サイトの言葉 宮坂登


 宿の良さや素晴らしさを「明確な言葉」として伝えること。ウェブ全盛時代になっても、そのむずかしさは変わらないだろうと思う。以前よりハードルが高くなっているような気もする。

 PCのみならず、タブロイドやスマートフォンへのマルチデバイス対応が当たり前になっている今、求められているのは視覚的に訴える美しいビジュアルだけではないと思う。デザインとマッチする的確な言葉の情報が必須だと声を大きくして言いたい。

 ある宿のオーナーを含む打ち合わせの席上で、新規にウェブサイトを立ち上げる際にあたって、メッセージ内容の打ち出し方や情報操作の大切さや必要性を説いていたところ、「どうせ宿のサイトなんてみんな同じ。部屋と風呂と食事のページがあればいい。何もむずかしく考える必要はない」と担当者が言い始めて、がっかりするどころか、かなり険悪な雰囲気になり、結局そのサイト制作の業務を辞退させていただいたことがある。

 今や、ウェブサイトは経営の根幹に深く結びついた大切な営業ツールである。ウェブ集客が経営状況を大きく左右する。特にスマホからの予約比率が増大している今、限られた画面の中でどのように宿の魅力をアピールしていくかが生命線となる。

 宿を目指す人たちは、情報を得るためにさまざまな旅情報サイトを目にして、その中から自分に適した旅行地や宿を吟味して探す。その担当者はそんな目の肥えた方々の存在を知らないのではないかと思う。

 お客さまは、真摯な目で見ているよ、と言いたい。サイトを作りさえすれば誰もがきっと見てくれる、ではなく、見てくれた人にその宿の魅力を分かりやすく、行きたくなるような表現に変えてアピールすることが何よりも必要なのだと思う。その会議でのやりとりを思い出すといまだに腹が立ってくる。

 言葉で宿を紹介する場合、施設サービス情報をそのまま等身大で伝えることは基本線。それに加えて「行きたくなるような触覚的な言葉」や「自分が今そこにいて感じているようなさま」を伝える言葉を紡ぎ出すことを考えてみたことはあるだろうか。その観点でさまざまな宿のサイトを眺めていると、サイト内容の善し悪しはもちろん、宿が大切にしていること、将来のビジョンなども見えてくる。

 真摯なお客さまに対して、真摯なサイトとなっているかどうかが分かるのも不思議だ。宿空間の持つ奥行きや時間の広がり。それを心地良く伝える術を考えてほしい。

 
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