【道標 経営のヒント 131】売るための出発点 宮坂登


 開業のサポートを行っているホテルのオープンが間近に迫ってきた。その準備はまだ完全ではない。サインの取り付け工事、写真撮影、ホームページの制作、パンフレットの制作などがあるが、今回はそのすべてをコントロールしていないので、通常のケースよりも多少気分が楽だ。とはいえ、到着時のご案内カードや部屋置きのインフォメーションブック、その後の販促計画についてもまだ、詳細な打ち合わせが終わっていない。そう言っていながらも締め切りは一日一日と近づいていく。現時点ではホテルのスタッフも完全に浮き足立っていて、焦っている分だけミスやチェックし忘れも多く、判断基準が曖昧だ。事前にどんなに綿密な制作日程を組んでいたとしても、諸般の事情により遅れてしまっている状況が不思議な臨場感を生んで、慌ただしく仕事をしている気分にもさせられてしまう。

 この期に及んで、そのホテルのコンセプトとは何かと考えあぐねている。オープンの事前予告をしているため、日々予約が入ってきているようなのだが、現場スタッフは今、その予約状況しか見ていない。とてもコンセプトを語り合えるような状況下ではない。自分たちのホテルをどのようなホテルにしていこうという未来ビジョンが持てないことはとても悲しいことだと思う。まだ、まっさらな状況で、考えようやりようによってはどんな未来も描けるはずなのに…。だから、今回は当たり前な方法論で制作物を作るのではなく、思い切った着想で意外な表現を形づくってみようと思っている。

 広告とは、ある意味で驚きを持って感じてもらうのが一番。例えば、パンフレットの形状も中綴じ形式やサイズにもこだわらず、コピー表現やグラフィックデザインも相手が想像も付かない内容でプレゼンテーションしようと思う。クライアントが驚く内容ならば、きっとその先にいる見込み客にも届く表現になる。単なる冒険とは思えない。

 今、苦悶しているのはそのホテルの地理的ロケーションや歴史的ロケーションをどのように打ち出すかという一点。歴史も地理も綿密に調べてある。それを販売促進の表現へとどうやって転化していくか、そのストーリーのまとめに入った。以前この誌面でもお伝えしたが、商品=ホテルの持つプロダクトポイントを、ユーザー側の利点、ベネフィットポイントへと変えることに時間を費やしている。

 ホテルの開業はお祭りでも単なるイベントでもない。売れるホテルに導くための出発点だと心に刻んでプレゼンテーションしようと思っている。

 
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