ある企業の若手社員の発想力強化に向けたセミナー。つい先日は2泊3日の合宿で、目標設定とそれに向けての問題点の抽出、課題設定、具体的な解決方法など、コンサルワーク風の講習を行った。目標が山頂にあると仮定し、麓からどの道を登るべきかルートを策定し、そのルートを登るためには何が必要なのかを考えさせ、実際の登頂へと向かわせる方法論である。そんなイメージに置き換えて説明し、彼らの向上心をあおった。かなりかみ砕いて説明したつもりだったが、彼らの反応をみると、いまひとつピンとこないようだった。
折も折、メジャーリーグの大谷選手の新人賞のニュースが飛び込んできて、彼らとレストランでワイドショーを見ていたら、大谷選手は高校時代から自らのための目標設定を行い、それに沿って努力をし続けていたと伝えていた。彼は高校の監督から教えてもらった「まんだらチャート」を使い、将来の目標を立て、そのためには何をするべきかを事細かに設定し、それらを実践していったという。初めは何気なくそのチャートを眺めていた若手社員たちが、次第に身を乗り出してテレビ画面を見つめていた。ある1人の若手が「これはどういう方法論なのか教えていただけませんか」と言い出したことをきっかけに、当初予定になかった勉強会をその場で行うことになった。
まんだらチャートとは、別名「目標達成チャート」とも呼ばれている。まず、9×9のマスを作り、真ん中に「自分の成し遂げたい目標」を書く。次はまわりの8マスにその目標達成するために必要な要素を書いていく。大谷選手は真ん中のマスに「ドラ1 8球団」と書き、その周囲にキレ、スピード160キロ、変化球、運、人間性、メンタル、体づくり、コントロールと記している。彼の活躍ぶりを思い返してみると、どれも達成しているからすごいと思う。
まんだらチャートはこれだけでは終わらない。今度はそのチャートをセンターに置いてマスを足し、周囲8要素を〈9×9〉のマスのセンターに置いて、それぞれの要素を達成するための要素をさらに書き込んでいく。大谷選手のチャートで説明すると、例えば「キレ」を達成するための要素として、リスト強化、下半身主導、可動域など具体的な8要素を挙げている。
なるほど!と、若手社員たちも目を輝かせ始めた。そしてこの方法論は冒頭に記した内容そのものであることにも気付いてくれたようだ。目標を立ててもままならずにいる若手社員は宿にも多いと思う。こんな方法論を会議の際に持ち込むのはいかがだろうか。