【道標 経営のヒント 181】オタクたちは、健常者でしょ 九州国際大学教授 福島規子


 朝日新聞主催「大学SDGs ACTION! AWARDS2019」の最終審査が2019年2月20日に有楽町ホール(東京)で行われ、福島ゼミはグランプリ、準グランプリは逃したものの「瀬戸内町×JALスタディツアー賞」を受賞した。

 受賞にあたっては「障がい者のために楽しみをつくる」といった継続的活動が評価された。2014年の障害者向け仕事体験企画「オ!シゴト・バリ体験」、2016年の車いすの新郎向けに開発した婚礼衣装「タキシーマ」(実用新案取得)、2017年のクラウドファンディングによる昇降式電動車いす「ペガサス」の製作と、この車いすを活用した「タキシーマ・ウエディング」。そして、2018年、JATA主催の「海外卒業旅行企画コンテスト」でグランプリを受賞した車いすユーザーのための海外旅行「ペガサス・ボヤージュ」である。

 今回のコンテストでは昇降式電動車いすを会場に持ち込みプレゼンテーションを行ったのだが、問題はこの車いすを持って帰るときに起こった。

 そもそも重量70キロの電動車いすは、障がい者が同乗しない限り飛行機に搭載することはできない。そのため学生たちは福岡―東京間を新幹線で移動することにしたのだが、復路の東京駅新幹線ホームで駅員から乗車を拒否されたのである。

 学生たちは乗降客の邪魔にならないよう最前車両のデッキに車いすを乗せようとスロープの設置を車掌に依頼した。しかし、車掌は障がい者が乗っていない車いすにはスロープが出せないと対応せず。さらに、別の駅員から「既定の重量を越えているので乗せられない」と車いす自体の持ち込みを拒否されたのである。学生たちは車いすを置いたまま乗車するわけにもいかず事情を詳しく説明したのだが駅員は耳を貸さず、しまいには「車いすは障がい者が乗るものでしょ」と言い放ったのである。「車いすは健常者には関係ない、単なる荷物」と言わんばかりの態度に学生たちは強い憤りを覚えたという。

 そのやり取りをはたで聞いていた最新型の高額車いすに乗った男性(福岡在住の会社経営者)が、駅員に「健常者が車いすに乗ってはいけないんですか」と問いかけたところ、駅員は途端に口ごもり、そそくさとその場を立ち去ってしまったらしい。何とか乗車の許可は得られたものの、結局のところスロープが用意されることはなかった。

 車いすは障がい者にとっては足であり、荷物ではない。たとえ健常者が車いすを押していたとしても、それは荷物を運んでいるのではない。「足」を預かっているだけなのだ。日本の玄関口である東京駅で、しかも訪日外国人客がもっとも利用する新幹線ホームで、こんなお粗末な対応がなされているとは。学生だからと甘く見られたのか。 

 コンテスト受賞で高揚した気持ちは一気に萎んでいった。

 
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