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新型コロナウイルスの騒ぎの中、5月に旅館の熱源改修工事を終えました。私が関わって以来42年を経過して冷温水発生機が2回目の更新時期を迎え、屋上のクーリングタワーが腐食で傾き、オイルタンクが消防署から指摘を受けるという事態になり計画が始まりました。蓄熱槽と冷温水発生機、チラーの組み合わせで、蓄熱槽の漏水と熱ロスも問題になっていました。
今回の改修計画に当たっては空調負荷の再計算と実測から始めました。これは国際観光施設協会の「エコ・小」の手法で計画にはエコ・小委員の協力を得ました。改修工事のときには負荷計算をやり直すのが筋ですが、往々にしてその手間を省き、現在と同じ能力で入れ替えることが多いです。その理由としては必要な負荷の判断がつかないことと、空調が効かないといったリスクを回避するためと思います。判断材料としては計測するのが一番ですが、高価な計測機器は一般的でなく、計測することが設計者にも施工者にも普及していません。
今回は客室系統、宴会場系統、ロビー系統など5系統の配管に超音波流量計と接触型温度計を取り付けて流量と往きと還りの温度差を計測して負荷の実測をしました。言葉で言うと簡単ですが、どの配管がどの系統か判断するのが大変で、配管の保温材を剥がして計測機を付けるのには骨が折れます。
客室は個別エアコンの方が省エネと分かっているので一部の客室のエアコン化を1年目に行いました。年に数回ある休館日を狙って休業なしで4期に分けた工事は2年にわたりましたが段取り良く進みました。
機器の暖冷房能力は客室を一部エアコン化したこともあり約半分に落としました。これだけ能力を小さくすることは計測なくしては怖くてできません。合計43kwhのポンプをインバータ制御の11kwhの循環ポンプ1台に替え、その電気代だけでも年間400万円減る計算です。ガス化も良い方向に効きそうです。コロナの影響で休業しているため効果検証ができないのですが、削減幅は年間1千万円に届くと期待しています。
3密を避けると現在の1室当たり2.5人から3人という数字も1室1人から2人と、2を切る時代も近そうです。現在の水道光熱費は業界平均で1人当たり1350円ですが、これ以上上がるのは避けなければなりません。
現在は原油価格の安さにも助けられていますが、将来的には上がります。計測や見える化で旅館を科学していかないことには経営にならないと危惧しています。