【道標 経営のヒント 288】ウッドショックを契機として国産材を使う 佐々山 茂


 超低金利とコロナ禍での在宅勤務普及により米国で住宅ブームが起き、木材需要が予想外に膨張し、世界的に木材価格が高騰し調達が難しくなるというウッドショックが起きています。

 長野県で木造のレストランを設計中で、クライアントの知っている唐松集成材メーカーに問い合わせたところ、年内分の受注はストップしていると言われました。住宅メーカーが国産材に切り替えるところもあり、影響が大きいです。今までは工務店が決まってから木材を発注していましたが、国の補助事業なので工事工程が決まっていて、今から手配しないと材料がそろわないと焦っています。

 6月18日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」がタイミング良く改正されました。森林は国土を保全し、地方経済を回すためには重要な資源ですが、国産木材は補助金がなければ経済的に回りません。公共建築が対象であった木材の利用促進を民間建物まで広げるのが今回の法改正の趣旨で脱炭素を頭に掲げています。

 戦後の拡大造林で植林された50年生を超える人工林が50%を超え、主伐期に入っていて、本格的な利用期になっているのですが、国産木材は安定的に供給し、経済的に回るようにしなければ輸入木材に負けてしまいます。

 今回の建築では県内材を製材して利用することにしました。山の木は生産者、原木市場、製材所、木材小売りと昔からの流通経路があります。設計者としてどのような材料がいつ必要になるかを木材関係者に直接伝えることで協力を得たいと思っています。

 例えばヒノキの80年生の丸太は長さ20メートルで4等分すると元の太さはそれぞれ35センチ、30センチ、25センチ、20センチになります。それから柱や梁(はり)といった角材を木取りしますが、切り落とした材がたくさん残ります。これらを上手に利用することで歩留まりが良くなり利益になるのです。

 昔の木造建築は屋根を檜皮葺(ひわだぶき)にしたように無駄なく木を使っていました。素材メーカーの木材供給側としては最終消費者の理解を得る努力が必要で、建築家としても協力する必要を感じています。

 旅館の設備投資には直接的な効果、採算が前提になりますが、お金を循環させるポンプとして地域経済を支えることも大切です。ウッドショックを契機として少しでも地域で意味を持つ建築ができないかと思っています。

 
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