【道標 経営のヒント 311】旅番組を見続けた1年 宮坂 登


 テレワークというよりも自宅でデスクに向かう時間が多かったこの1年。例年、毎月どこかに出張していたことを思えば、味気ない日々に身をやつしてきたように思える。そのせいか、テレビも旅番組ばかり好んで見ていた。コロナのニュースに飽き飽きしていたことも理由かもしれない。特にNHKの旅番組は秀逸で、例えば「新日本紀行」を見ていると、過去に訪ねた場所でも知りえなかった歴史や習俗、市井の人々の暮らしを見て取ることができて、日本は深く、そして広いものだとつくづく感じ入る。卓上のメモを見返してみても旅番組からのものが圧倒的に多かった。どこかで役立てたいと思っている。

 旅行業界がコロナ禍に置かれた状況については本紙に詳しいが、海外に暮らす友人とネット上で話しているとコロナに対する切迫感が国によって大きく異なることにも気づいた。例えば、マスクもワクチンも拒絶しているアメリカ人がいる。コロラドの山の中にいるからなのか、コロナ前と全く変わらない生活をしているそうだ。シンガポールと日本を頻繁に行き来していた華僑の友人は国に帰れず、家族と離ればなれで日本に長逗留(とうりゅう)する日々が続いている。孤独感にさいなまれた彼からの電話が多いので、気分転換に旅に出ることを勧めたところ、東北の宿が気に入り、最近ではしばしば出掛けていると報告を受けた。5つ星の宿の本が宿選びのバイブルになっているそうだ。

 個人的なつきあいの中でも宿選びのアドバイスを頼まれることが多い。ともにカラオケや食事を楽しむ友人として、かつての東京都知事、青島幸男氏の奥さまもまだご健在でいる。コロナが下火になったので、つい先日、友人たちと京都を満喫してきたと聞いた。名うての宿を数軒泊まり歩いたようだ。そのお仲間から特に温泉が良いところはどこだろうか、という質問も受けたから数軒の宿を紹介した。いろいろな旅行サイトを見てもみんな同じ宿に見えてしまってよく分からないそうである。そのひと言がスマホの普及ぶりを物語っている。写真と行ってみての印象が違うとちょっと悲しいからね、とも言っていた。宿を代弁して、コロナ禍で1人でも多くの集客を願うだけに宿側もそう思われても仕方ない事情があるんだよ、と付け加えて説明した。

 今年は何人に宿を紹介しただろうか。例年より少ないが、宿のお役に立てることとして筆者にはそれしかできない。1年の締めくくりの反省として、来年こそ成果の大きい年とすること、自分でも旅することをわが身に課したい。

 
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