【飛騨高山観光特集】春の飛騨高山で心身リフレッシュ 観光基盤のまちづくりに向けて


外国人客は過去最高 5千室の規模で多様な選択肢

 岐阜県の飛騨高山が観光客でにぎわっている。古い町並など観光名所には日本人や外国人旅行者の姿が目立つ。飛騨・高山観光コンベンション協会の堀泰則会長(ひだホテルプラザ)に飛騨高山の魅力や今後の課題などについて聞いた。聞き手は編集委員の内井高弘。(2月下旬、協会事務局で)

――市内は多くの人でにぎわっています。最新の入り込み状況はいかがですか。

 「2024年の観光入り込み客数は442万2千人で、前年比8.6%増です。新型コロナ禍前の19年(473万3千人)には及びませんが、客足は確実に戻っています。うち、宿泊者数は224万9千人で、同17.3%増と2桁の伸びです」

 ――外国人旅行者は日本全体で見ても増えていますが、飛騨高山ではいかがですか。

 「宿泊者数は76万9743人で、過去最高となりました。伸び率は70・1%で、大きく増えましたね。地域別に見ると、アジア・中東が35万1025人、欧州18万1103人、北米5万7472人、中南米1万101人、オセアニア3万7875人、アフリカ723人などです」

 ――オーバーツーリズムが問題になっていますが、そこまではいっていない?

 「そうですね。ただ古い町並など限られたエリアに集中しているきらいはあります。狭い空間なので余計に目立つということもありますが、ちょっと心配ですね」

 「特に飲食の面で受け入れ態勢が十分ではない。夜遅くまでやっている店が少なく、夜の観光に対応できていない。ナイトタイムエコノミーではありませんが、皆さんの協力を得て、何か手を打たないとだめだと思います」

 ――いま、宿泊施設はどのくらいあるのですか。

 「17年以降急激に増え、24年1月現在では439施設となっています。客室数についてですが、25年以降の確定分を含めると5千室の規模となります。山間部の都市にこれだけの客室数があるというのは非常に珍しい。民泊施設などの増加も著しく、カジュアルからラグジュアリーまで、観光客の選択肢が多いのは大きな特徴です」

 ――宿泊業界は人手不足と言われていますが。

 「高山も例外ではありません。コロナ禍で離れた人たちも戻ってきていません。従業員の引き抜きという事態は起きてはいませんが、深刻な状況であることに変わりはありません。なかなか有効な手立てはありませんが、外国人や高齢者の雇用、女性の登用を真剣に考えなくてはなりません。市の総合計画の中に『多文化共生社会』という文言が盛り込まれていますが、外国人との共生は今後拡大していくことが想定され、われわれ観光業界も持続可能なまちづくりに向けてどのように協力していくべきか真剣に考えるべきです」

 ――市は昨年10月、持続可能な観光地を国際的に認証する「グリーン・デスティネーションズ・アワード」でシルバーアワードを受賞しました。

 「中部地区では初の受賞となり、大変うれしいです。受賞したからといって何かが急に変わるわけではありませんが、SDGsに対して真剣に取り組んでいる都市として認知されたことで、それらに関心のある旅行者にとってはアピールポイントとなるのではないでしょうか。観光を活用した持続可能な地域づくりを目指します」

 「先人たちの努力により脈々と受け継がれてきた飛騨高山の歴史や文化、自然を市民一人一人が享受するとともに、裾野が広く、地域の人材・資源・産業を有効に活用できる観光の特徴を生かした地域づくりを発展させることで、国の内外から選ばれ続ける、住んでよし、訪れてよしの『国際観光都市 飛騨高山』の実現に向け取り組んでいきます」

 ――「宿泊税」の導入を検討されていましたが。

 「昨年12月議会において条例案が可決され、今年10月1日から実施します。1人1泊の宿泊料金(飲食代など除く)が1万円未満なら100円、1万以上3万円未満で200円、3万円以上で300円の定額制で徴収します。ただ、小学生までと修学旅行など学校行事の参加者については免除します。宿泊税の税収は4億円程度を見込んでいます。お客さまの反応が気になるところですが、大きな負担をかけない金額ではないでしょうか」

 「地方交付税は年々下がっていますし、人口減で税収も減っていきます。その中で観光振興や地域振興を行うためには新しい税を導入しない限り、財源を確保できません。宿泊税を巡ってはいろいろな意見もありますが、われわれは地元の旅館団体や観光協会などの要望を受け議論を重ね、昨年3月に13団体連名で早期導入を求める要望書を提出しました。観光関係者の総意ということです」

 「使途については『国際観光都市 飛騨高山』実現に向け、(1)観光振興(バリアフリー対策による居住、滞在環境の向上、インバウンドに対するマナー啓発の強化など)(2)環境保全(公衆トイレや交通機関などの利用環境の向上など)(3)文化振興(文化財の保全や活用など)(4)危機管理(インバウンド医療体制の強化など)(5)組織運営(観光専門人材の確保や育成など)―の5事業に充てるほか、賦課徴収に要する市の経費や特別徴収義務者の支援に活用します」

 ――高山には飛騨高山ビッグアリーナ(収容人員4千人)など大規模施設が数多くあり、MICEの受け入れ態勢も充実していますね。

 「26年には8千人収容の大型施設が開設する予定です。受け入れにあたっては何の問題もありません。MICEは消費額も大きいだけに積極的に誘致していく。産業団体、グローバル企業、大手企業のインセンティブ旅行などに飛騨高山の観光資源を活用したプロモーションなどを展開していきます」

 ――25年度については協会としてどんな事業活動を。
 
 「観光振興については当協会と行政、各地の観光協会が携わってきましたが、一部業務の重複があるので、役割分担を整理します。05年の町村合併で各地の観光協会を高山市観光連絡協議会という組織に一括りにしていましたが、DMO(飛騨・高山観光コンベンション協会)内に『観光地域連携委員会』を新設し、その中に組み入れ、独自性のある地域資源の掘り起こしや誘客に一体感をもって取り組むようにします」

 ――4月に大阪・関西万博が開幕します。飛騨高山にもいい影響を与えるでしょうか。

 「外国人も含めて、万博を観た後は中部にも足を運んでほしいですね。万博をにらんでどう情報発信をしていくのか、検討していきたい」


飛騨・高山観光コンベンション協会会長 堀泰則氏

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