埼玉県春日部市の公認キャラクター「クレヨンしんちゃん」は、今年2025年で連載開始から35周年の節目を迎える。
当初は青年誌への掲載で、「大人向けのギャグマンガ」の趣が強かった。それが子供から大人まで親しめる物語に変わっていったのは1992年のTVアニメ、1993年のアニメ映画が契機で、現在まで継続的に制作され人気を博している。「最初に人気が出たのは15~16歳の女子高校生たちで、彼女たちの発信力でファン層が一気に広がった。おそらく今は50歳代前後で、孫もいる世代かもしれない。親子3代で応援しているファンも多くいます」と双葉社で連載当時から担当している鈴木健介さん。
マンガの発行部数は総計5千万部、アニメ映画は昨夏公開の「オラたちの恐竜日記」が、興行収入でシリーズ過去最高の27億円を突破、中国や韓国、台湾、タイ、ベトナム、シンガポールなどでも上映されており、海外での人気は特に中国で急上昇中という。多くの作品で「春日部市」が登場することから、「ゆかりの地」めぐりで訪ねてくる国内外のファンは引きも切らない。今夏は32作目となる「超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」の公開が決まっている。
原作者の臼井儀人さんが不慮の事故で亡くなってから15年以上がたつ。いまも新作が公開され、人気が国内外で上がり続けているのは何故か。臼井さんの生前から脇を固めてきた関係者たちが「先生ならどうキャラクターを動かすか」「これ以上してはいけない」等と、「しんちゃん」を大切に守り続けて、作品を生み出し、発信してきたからだ。
その一つが昨年11月末に閉店したイトーヨーカドー春日部店の事例だ。作品中に登場するスーパー「サトーココノカドー」のモデルで、シンボルマークは本家の「ハト」に対し「コウモリ」。2017年に期間限定で、看板とマークをこちらに切り替えるイベントを行った。当時の社員が本社を説得して、双葉社側の了解を得た。臼井さんが存命であれば喜んで承諾しただろう。これが大きな話題になり、衣類や小物など関連グッズも多数、製作され、閉店時に設けられたコーナーでは飛ぶように売れていた。双葉社によるとグッズの市場規模は国内外あわせて600億円に上る。
35周年にあわせ埼玉県、しんちゃんの父ひろしの故郷・秋田県と母みさえの故郷・熊本県を結んだイベントも企画されている。秋田県には横手市に「増田まんが美術館」があり、同市出身の矢口高雄さんの「釣りキチ三平」をはじめとする原画が多数、収蔵されている。熊本県では熊本大学(熊本市)に国際マンガ学教育センターがあり、世界的な人気マンガ「One Piece」の作者、尾田栄一郎さんの出身地でもあることから、県内には「ルフィ」をはじめとするキャラクターの銅像が点在する。マンガつながりで3県を結ぶのも一案ではないか。
※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。
春日部市役所zzzzzzzz
(観光経済新聞1月13日号掲載コラム)