![](https://i2.wp.com/www.kankokeizai.com/wp-content/uploads/431910.AFP01-6.jpg?resize=320%2C320&ssl=1)
JR豊後竹田駅のメロディは、「荒城の月」が戦後間もない時期から使われている。2013年8月からは、街に伝わる「隠れキリシタン文化」を象徴するメロディ「サンチャゴの鐘」(作詞:横井弘、作曲:船村徹)も流すようになった。
この歌は船村徹(1932~2017)が竹田を訪れた際の印象をもとに1973年に書き、舟木一夫が歌った叙情演歌。これが、2012年に竹田市が企画した「岡藩城下町400年祭」のテーマソングとして39年ぶりに復活した。竹田の発展に尽くした中川家の初代藩主、中川秀成(1570~1612)の没後400年を記念したイベントで、竹田市は2012年、船村が歌うバージョンをテーマソングとしてCDを制作、駅のメロディは秋田市のハンドベルグループが制作した。船村は同年9月に竹田市でコンサートを行い、弾き語りで披露。「400年の時を経てよみがえった鐘の音は、心に染みる美しい音色でした。
『サンチャゴの鐘』が竹田、日本、そして世界中の平和の象徴になることを願ってやみません」と話した(西日本新聞、2012年10月5日)。
「サンチャゴの鐘」(写真=竹田キリシタン資料館提供)とは長崎県の同名の病院にあったという銅製の鐘で、江戸時代初期の1612年に造られ、その年号と「HOSPITAL SANTIAGO」の文字と十字の刻印がある。1614年の江戸幕府の禁教令以後、弾圧を避けるため、何らかの手段で岡藩に渡ったらしい。国の重要文化財で重量は108キロ。このような「キリシタンベル」は国内に4個、現存し、その中でも最大級だ。長く岡城の中に隠されていたらしく、1871年に岡城を取り壊した際に発見された。発見後は神社に収蔵され、1950年には国の重要文化財に指定されたが、市の資料館に移されたまま眠っていた。
鐘に日の目を当てたのが当時の竹田市長の首藤勝次氏である。「何かしなくてはと、資料館の収蔵物を見に行ったら、『サンチャゴの鐘』があった。何かに導かれていたような気がした」と振り返る。「サンチャゴは日本語に置き換えれば聖人ヤコブのこと。ヤコブはスペインを異教徒から守る軍神でもありました。日本にキリスト教が入ってきた戦国時代の武将たちは、軍神にあやかろうとして、戦いに勝利した時に『サンチャゴ』と叫んだといいます」と竹田キリシタン資料館館長の後藤篤美さんは言う。
2024年2月から日本経済新聞で作家の諸田玲子氏が連載する新聞小説「登山大名」が始まった。主人公は岡藩の第3代藩主・中川久清(1615~1681)で、登山が好きで、江戸幕府への反骨を胸に、大胆な藩政改革に取り組んだ地方大名という(日本経済新聞、2024年1月23日付)。「映像化されれば、竹田市の観光振興にこの上なく有効と予想されます。竹田市全体でこの映像化に取り組むことが急務」と後藤さんは期待する。
※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)など。