【駅メロ とわずがたり 30】鳥取で岡野貞一の駅メロを/石破茂元地方創成担当相 藤澤志穂子


 「駅メロ」は地方創生の切り札になる。そう考えて書いてきたのがこの連載であり、記事をまとめた「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)を4月に出した。石破茂元地方創生担当相に読んでいただき、感想を聞いた。

 「地方創生にこんな方法があるのかと思った。ぜひ地元の鳥取でも実現させたい。こんど地元に戻った時、JC(商工会議所青年部)にハッパをかけてみようと思う」

 本書で取り上げた駅には、JCのメンバーが軸となって実現させた駅メロがいくつかある。JR福島駅「栄冠は君に輝く」(作曲:古関裕而)、JR水沢江刺駅「君は天然色」(大瀧詠一)、JR茅ヶ崎駅「希望の轍」(サザンオールスターズ)など。若手が街を引っ張り、署名活動などを経て、市民が一丸となって実現に向かっていった。では鳥取では何の歌を?

 「鳥取市出身の作曲家、岡野貞一(おかの・ていいち/1978~1941)は、名前は知られていないけれど、誰もが知る有名な唱歌をたくさん作った人です。『春の小川』『朧月夜』『ふるさと』など。これを鳥取駅で実現させたい。季節ごとにメロディを変えるのもいいですね。こんな立派な人がいた、ということを、地元の人に改めて再認識してほしい」

 政界随一の鉄道マニアだけに、鉄道の話題には一家言ある。

 「夜行列車がなくなったことで、一つの時代が終わったように僕は思う。例えばかつての寝台特急『北斗星』。上野駅で『札幌』と書かれた行き先を見て、かの地へのロマンが広がったでしょう? 同じく青森行の『あけぼの』もそうだった」
 「乗り鉄」の私にはその感覚が良く分かる。この列車がそんな遠い先まで、時間をかけて連れて行ってくれる、という郷愁だろうか。新幹線や飛行機で、短時間で着いてしまう土地への郷愁は、時間の短縮とともに薄れたかもしれない。本書ではJR仙台駅「青葉城恋唄」を歌ったさとう宗幸さんが、東北新幹線の開通前に上野―仙台間を4時間かけて走っていた「特急ひばり」を懐かしんでいる。

 「ローカル線の存続問題でよく、『乗って残そう』と言われるけれど、それは違う。『乗って楽しい』が基本です。例えばダイニングカーをつけて地元野菜を料理して出すなど、農業と結びつけるのもいいですね」

 舌鋒(せっぽう)鋭いのが、リニアモーターカー”懐疑論”だ。巨額の資金を投入し、品川―名古屋間を最速40分で走る意味とは何か。リモートワークが普及した今、移動する意味とその時間の価値は変わった。リニア建設について、かつて取材した某大手建設会社社長が、想定される、山岳地にトンネルを通す難工事を「男のロマン」と話していたのを複雑な気持ちで聞いた。「そもそも車窓がないでしょう? 乗り鉄としてはあまり魅力を感じないんです」。全く同感である。

 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。
著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。


石破茂元地方創生担当相

 
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