歴史文化遺産と無形の文化遺産が豊富
奈良は日本最初の都だ。遷都後も南都七大寺に代表される神社仏閣が栄えた宗教都市として存続。その価値が認められ「古都奈良の文化財」は、東大寺、春日大社、元興寺などの社寺と、神域とされる春日山原始林などを含め世界文化遺産として登録されている。さらに「飛鳥・藤原」でも新たに世界遺産登録に向けた活動があり、南部の吉野エリアも含めて、現存する多数の国宝、重要文化財、世界文化遺産を抱える世界に誇る観光地だ。また、平安時代から神域として一切の伐採や植林を禁じ、保全されてきた春日山原始林や、神の使いとされる鹿を大切にして共生してきた人々の生活や文化は、無形の文化遺産といえる。
有形・無形の文化遺産を目にすることができる奈良は、持続可能な社会の生きたモデル。地域全体が「SDGsを学ぶフィールドミュージアム」だ。
そんな奈良県に生まれた探究学習プログラムは、「旅マエ」から「旅ナカ」「旅アト」までを考えた体験型。「SDGs教育の最先端である奈良教育大学ESD・SDGsセンターの教授陣によるSDGs講義」と「班別少人数でガイドと対話しながら行うフィールドワーク」「旅マエから旅アトまで利用できるガイドブックによる学習」の三つの学習で構成されている。奈良教育大学の監修の下、新しい学習指導要領に沿った主体的で深い学びにつながる内容となっている。
SDGs講義は、事前に学校の教諭と奈良教育大学の教授とが直接話し合い、各学校のSDGs学習の習熟度や、学びたいテーマに合わせて講義内容を決める。さらに、学校が希望すれば、より専門的な講義にアレンジすることも可能だ。学校側がプログラムの内容を深く理解することで、「旅マエ」での学習の質の向上につながっている。
新学習指導要領に「豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となること」という点が追加され、どのような指導を行えばいいのか検討している学校も多い。そのような学校の今後の教育・学習方針のヒントとなるという点でも、同プログラムに対する注目度は高まっている。
受け入れ窓口となるのは、「奈良新しい学び旅推進協議会事務局」。奈良を訪れた修学旅行生が今後、持続可能な社会の創り手として自分の住む地域に貢献することを目指すとともに、奈良への修学旅行誘致を促進して、地域観光産業振興に貢献し、地域経済の持続性の向上を目的として活動している。
奈良県での探究学習プログラムについて同協議会は、「奈良県の数多くの歴史文化遺産を通して、歴史学習だけでなく、1300年の歴史を持つ古都奈良が『過去・現在・未来』へと途切れなく続く理由を考える。さらに有形の歴史文化遺産と、無形の文化遺産も含めて考えることで、SDGsが提唱する持続可能な社会の重要性を理解できる内容にしている」と話す。
奈良県では今後もより深い学びを得られる教育旅行プログラムの開発、提供を行うことで、「SDGsのフィールドミュージアム奈良」という新しい価値を発信し続けていく考えだ。
ESD・SDGsセンターの教授陣によるSDGs講義
歴史的な文化財などを見学するまち歩きプログラム
春日山原始林について学ぶコースの様子